大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>33.松下のトップが強気になれる理由

2007/01/22 18:44

週刊BCN 2007年01月22日vol.1171掲載

 松下電器産業の大坪文雄社長は1月10日、2009年を最終年度とする中期経営計画「GP3」を明らかにした。

 06年6月の社長就任以来、初の中期経営計画の発表。これまでは具体的な数字の発言には慎重な姿勢を示してきた大坪社長だけに、今回の発表でどれほど強気の姿勢を見せるのかが注目された。

■エクセレンス企業を目指す

 結論からいえば、その期待は裏切られなかった。GP3では、売上高10兆円、ROE10%を対外的な目標に掲げ、社内的には営業利益率8%達成を掲げた。

 「グローバルエクセレンス企業への挑戦権を得るための中期経営計画」と大坪社長がいうように、この計画は2010年以降に営業利益率10%を達成し、グローバルエクセレンス企業の仲間入りを果たすという、中村夫前社長(現会長)の想いを実現するための試金石となるものだ。

 具体策として、「海外2ケタ増」「4つの戦略事業」「継続的な選択と集中」の3点をあげた。薄型テレビでは、09年度に37インチ以上の市場において、全世界25%のシェア獲得を目指す計画を明らかにしたほか、デジタルカメラでは09年度に全世界で15%のシェア獲得を目指す。

 「薄型テレビは、松下電器が絶対に負けることは許されない事業だ。全社の総力をあげて戦う。デジタルカメラは最後発であるが、トップ3の一角を占める確固たるカメラブランドに育てる」と宣言。

 また、ハイビジョンムービーとBlu-ray Discに関しては、デジタルAV事業の第3、第4の柱に成長させる考えを示し、それぞれ09年度には40%、35%のシェアを全世界で獲得する計画を明らかにした。

■詳細な数字の裏付けが自信に

 これだけ強気の数字を示したのは、大坪氏が社長に就任してからは初めてのことだ。

 計画の策定に対しては、各ドメインに対して、細かい数字の積み上げを求めた。重要な製品に関しては、スペック、価格、他社との競合状況、シェア、収益、ポシションを明確にし、それを3か年でどう改善するのか、技術的課題は何かといった点まですべてを洗い出した。そして、個別製品の今後3か年のコスト構造にまで踏み込んで議論しているという。

 こうして積み上げた数字だからこそ、大坪社長は自信を持って、強気の姿勢を明らかにしたといえる。その強気の計画を達成するための最大の課題は、海外事業の2ケタ増となる。

 現在、連結売上高8兆9000億円を、09年度に約1兆円増の10兆円とするが、このうち、約7割を海外事業で増加させる考え。

 「北米、欧州市場では3年間で3100億円、アジア・中国では3400億円の増加を見込む。とくに、BRICsとベトナム市場においては、3年間で2000億円の増加を見込む」と大坪社長は語る。地域ごとの特性にあわせた戦略が打ち出せるかがカギとなるだろう。

 白物家電は地域ごとの差が大きく、ひとつの製品ではカバーできにくい。それに対して、地域特性の差が少ないデジタル家電製品は、世界戦略には適した製品だともいえる。デジタルAV機器の成功が、クローバルエクセレンス企業到達への近道となる。
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