大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>31.プリンタ各社がソリューションを訴える理由

2007/01/08 16:51

週刊BCN 2007年01月08日vol.1169掲載

 2006年の年末商戦、インクジェットプリンタは、例によって熾烈なシェア争いが展開された。

 BCNランキングによると、インクジェットプリンタのメーカー別シェアは、10月ではキヤノンが45.2%、セイコーエプソンが44.7%。11月には、キヤノンが47.2%、セイコーエプソンが43.3%と、2社の激しい争いが繰り広げられている。12月に入ってもこの傾向は変化なしだった。

 だが、両社の首脳の関心は、こうした激しい争いとは別のところに移っているようだ。

■本体よりも消耗品で稼ぐ

 両社が関心の軸足を移したのは、プリンタ本体のシェア争いではなく、ソリューションにフォーカスした市場活性化策である。

 06年の年末商戦で、キヤノンが「ENJOY PHOTO」や「デジタルソリューション」という言葉を使い、エプソンが「テレプリパ」や「日曜日はお家プリントの日」を打ち出したマーケティングを開始したのも、本体シェアの拡大策ではなく、ソリューション重視の姿勢が現れたものだといえる。

 ではなぜ、両社トップの関心が、シェア争いからソリューション重視へと移行したのか。それにはいくつかの理由がある。

 ひとつには、他社がまったく入り込めないような2社寡占状態が続いている点だ。

 今後、両社がシェアアップを目論むとすれば、あとは消耗戦に陥らざるを得なくなるのは明らか。収益性を落としてまで、これ以上、シェアを高めるのは無意味との判断が前提にある。

 2点目には、プリンタのビジネスが、プリンタ本体の収益よりも、インクカートリッジや印刷用紙などの消耗品の収益によって成り立っている点である。

 インクジェットプリンタ本体は、80%以上のユーザーが、5年以内に新製品に買い換えるという。つまり、5年間にわたっていかにインクを消費してもらうかが、プリンタ事業の収益を左右することになる。プリンタ本体の出荷台数が大きく伸びなくても、インクカートリッジの使用量が倍になれば、収益は2倍以上に拡大するという計算式が成り立つともいえる。

■ホームプリントを見据える

 プリンタ市場は成熟局面に入っている。ダイレクトプリントやテレビプリンティングが普及しても、これ以上、プリンタ本体の急激な市場拡大は見込めないというのが、メーカー各社に共通した見方。だからこそ、プリンタメーカーは、ソリューションに力を注ぎはじめている。

 キヤノンマーケティングジャパンの試算によると、国内における年間のホームプリント枚数は、06年には24億枚であったものが、10年には50億枚に倍増するという。家庭におけるデジカメの高機能化と、さらなる普及。そして、デジタルテレビの普及によるテレビプリンティング利用の増加などが背景にあるからだ。

 インクジェットプリンタ市場が成熟するなかで、プリンタメーカーのマーケティング施策は大きく変化している。

 戦いのステージは、瞬間風速ともいえる本体シェアの争いから、プリンタ購入後5年間を見据えたソリューションの争いになっているのだ。
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