大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>30.ソニーPC事業の新たな挑戦
2007/01/01 18:44
週刊BCN 2007年01月01日vol.1168掲載
事業を統括するコーポレイトエグゼクティブSVP VAIO事業本部・石田佳久本部長は「2006年度は、VAIO始まって以来の売上高、利益を達成できる」と自信をのぞかせる。国内PC市場の低迷が続くなか、なぜソニーのPC事業は好調なのだろうか。
■海外市場が順調に拡大
その理由のひとつに、海外市場での好調ぶりがあげられる。
ソニーのPC事業は、06年度見通しで、国内110万台に対して、海外310万台の出荷を計画。事業の中心は完全に海外へシフトしている。出荷台数の8割以上を占めるノートPCの比重が北米市場で増加。さらに、欧州市場において、B5サイズの市場が拡大していることや、05年のロシアへの参入に続き、06年にはウクライナやトルコにも進出、それがプラスとなったことも見逃せない。また、ここにきて力を注いでいる南米市場においても、従来のデスクトップ中心の市場構造が大きく変化。ノートPCの比重が高まったことで、販売数量が増加しているのだ。
日本市場における出荷計画では、台数ベースで前年比10%増。金額ベースの計画は、明らかにはしていないが、横ばいといったところだろう。
■法人向けはユーザー志向で
だが、日本市場のテコ入れにも余念がない。
それが、12月2日から出荷を開始した「typeG」を核にした、法人向け市場への本格参入だ。
同社では、05年度下期から事業を担当する専任チームを設置。国内約1300社のユーザー企業にヒアリングを行い、市場参入の準備を進めてきた。製品仕様には、そうした市場調査の結果が色濃く反映され、日本の企業に最適化したモバイルノートPCが完成した。
最大の特徴は、ワイドスクリーンで先行していた同社が、typeGに関しては、あえて4:3の液晶モニタを採用したことだ。
「日本のユーザー企業の声を聞いた結果、ワイドスクリーンでは戦えないという報告があがってきた。何度も検討を重ねたが、ユーザーの声がそうならば、それしかないと判断した」と石田本部長は語る。
日本独自の仕様として、国内法人市場に参入したことからも、同社の本気ぶりがわかる。
さらに、ソニーが得意としている「軽・薄・スタミナ」を実現するとともに、堅牢性にもこだわり、マルチカーボン構造の採用とともに、新たに試験機を導入して、落下や衝撃試験、加圧試験なども徹底的に行った。
「スペックをクリアすることを目標にするのではなく、壊れるところまでやって、そこから逆算してスペックを決めた」ことで、より高いレベルの堅牢性を実現したという。
ソニーでは今後、国内法人向けビジネスを年率50%で増加させ、09年には国内出荷の約30%を法人向けとする計画だ。
07年には、低価格のノートPCの国内市場への投入など、これまでのソニーにはみられなかったような施策が展開されるだろう。ソニーが国内市場で一暴れしそうである。
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