大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>28.暗いトンネルに迷い込んだPC事業

2006/12/11 16:51

週刊BCN 2006年12月11日vol.1166掲載

 電機大手の上期連結決算が出揃った。デジタル家電を巡って勝ち組、負け組の明暗が分かれたのが上期決算の特徴だ。プラズマと液晶テレビで垂直統合型のビジネスモデルを実践している松下電器産業、そしてシャープが好業績を発表。その一方で、携帯電話事業の不振につまづいたNEC、構造改革を推進中の日立製作所も赤字決算となった。

■ドル建ての部品調達響く

 PC事業は、各社とも軒並みシビアな内容となった。なかでも全社決算で通期見通しを上方修正するほどの好調ぶりをみせた東芝は厳しい。欧米市場では販売台数が増加、この影響で売上高は、前年同期比18%増の4512億円と増収となったが、営業損失は前年同期の14億円の黒字から74億円の赤字に転落した。

 ドル建てでの部品調達が大半を占めていることで、上期の円安傾向が収益悪化に直接影響したと東芝は説明するが、これはPCメーカー各社とも共通。戦略的に流通価格を引き下げたことが業績に影響したといえそうだ。すでに固定費の大幅な削減、生産体制の見直し、プラットフォームの削減などの構造改革を実行。下期の収益水準はブレイクイーブンを目指すとしているが、上期70億円の黒字予想に対して、実績は74億円の赤字となっただけに通期の赤字は必至といえる。

 国内トップシェアを誇るNECも利益確保に苦しんだ。パーソナルソリューション分野の売上高は7.0%減の3359億円と停滞したが、国内事業は黒字を確保したという。だが、このなかには今年7月に分社化したビッグローブ事業が含まれる。NECのPC国内出荷台数は前年同期比5.7%減の133万台、収益については公表していないが、上期はブレイクイーブンとコメントする。

 欧州で個人向けPC事業を展開してきたパッカードベルを売却したことから、下期は売上高のさらなる減少が見込まれる。今後、PC事業を国内向けに特化するなかで、いかに収益を確保する体制へとシフトできるかが焦点となる。

■やはり「Vista」頼りか

 インターネットAQUOSで大画面PC市場に積極展開しているシャープは、PDAを含めた情報機器事業の売上高が2.7%増の2168億円、営業利益が30.8%増の158億円。一見して業績は順調とみえるが、「PC事業は儲からないため絞り込む方向に舵を切った。インターネットAQUOSはPCを使う人にとっては価格が高く、テレビとして買う人もPCの機能が壊れたらどうするのか、といった声もある。うまくいっているとはいえない」(佐治寛副社長)とする。実際、PCの上期売上高は42.1%減の105億円と大幅減となった。

 富士通、松下電器など黒字を達成しているメーカーもあるが、PCは他のデジタル製品群に比べて収益性が高いとはいえない。

 上期のPC出荷は3年ぶりの前年割れで推移している。年末商戦でWindowsVista発売前の買い控え状況をいかに乗り切るか、Vista発売後に低迷した需要をどれだけ顕在化できるかが、通期の業績に影響するだろう。各社の業績と置かれた状況をみる限り、PC業界はいつの間にか、暗いトンネルの中に入ってしまったのかもしれない。
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