臨界点
ジャストシステム コンシューマ事業本部 カスペルスキープロジェクトリーダ 横井太輔
2006/12/04 18:45
週刊BCN 2006年12月04日vol.1165掲載
最高峰のセキュリティを日本へ ブランド力と顧客基盤生かす
――市場への参入を決めた理由は。「最高の技術力を一般消費者に届けたかった。日本のセキュリティソフト市場は、ブランドと価格だけでしか評価されていない。この現状を打ち破りたかった」
――これまでのジャストシステムの事業のなかで異色だ。社内では反対意見もあったのではないか。
「『なぜセキュリティなのか』など、いろいろな議論はあった。ただ、ジャストシステムの方針は、高い技術力を全世界のユーザーに提供すること。自社開発した技術・プロダクトを世界中に販売するとともに、世界にある最高の技術を日本のユーザーに提供することも使命だ。したがって、方針に合っている。議論を重ねたうえでの参入だ」
――なぜカスペルスキー製品なのか。
「高い技術力を持つからだ。他社製品で見つからない不正プログラムもカスペルスキーの技術では容易に見つかる。実際、私も大手他社製品を使っていたが、カスペルスキー製ソフトでいくつも不正プログラムを発見した経験がある。防御技術は最高峰。カスペルスキーでなければ市場参入はあり得なかった」
――主力の統合型セキュリティソフトは、通常版で1万2800円と他社製品に比べてかなり高い。受け入れられるのか。
「ターゲットは、毎日2時間以上インターネットを使うヘビーユーザーとした。オンラインバンキングやネットオークション、ネット通販を利用する一般消費者は、価格が高くても最高峰の防御技術を使いたいと思っている。この層にしっかりとメッセージを伝えれば受け入れてもらえる。すでにセキュリティソフトに詳しい一般消費者のブログでは、高い技術力を評価してくれている記事が多数出ている。予約販売では1000本を超えた。大手3社のように、広く市場にアプローチするのではなく、ヘビーユーザーを対象とすることで、高価格でも評価してもらえるはずだ」
――高い技術力を持っていても、シェアを高められなかったベンダーもいるが。
「ジャストシステムの培ったブランド力が生きる。オフィスソフトなどで実績がある当社が扱うソフトということで、ユーザーに安心感を与えられるはずだ。これまでの参入企業とは違う」
――どう売るのか。
「店頭販売、OEM供給もしながら、ジャストシステムの500万人を超えるカスタマーベースも生かす。『一太郎』や『花子』を購入してくれたユーザーにDMなどで紹介し、60日間のフル機能期間限定版を利用してもらう。技術力には自信がある。認知してもらい、使ってもらうことに集中する」
――販売目標は。
「まずは発売後1年間で店頭シェア5%の獲得を目指す」
――法人向けの展開は。
「すでに企業から数件問い合わせがきている。来年の春には始める予定だ」
Corporate PROFILE
10月3日、ジャストシステムはセキュリティソフト市場への参入を発表。11月17日から販売を開始した。ネット予約では、11月の上旬時点で1000本以上の注文があったという。投入した製品は2モデルで、統合型セキュリティソフトの「Kaspersky Internet Security 6.0」(価格は1万2800円)と、ウイルス対策ソフト「Kaspersky Anti─Virus 6.0」(同8800円)。開発元はロシアのセキュリティソフトメーカーのカスペルスキーラブズ。パッケージには、カスペルスキーラブズ創業者の写真を使い他社との差別化を図った。
- 1