臨界点

富士ソフト IT事業本部 システムインテグレーション事業部 筆ぐるめ推進室長 岡野正幸

2006/11/27 18:45

週刊BCN 2006年11月27日vol.1164掲載

 富士ソフトのはがき作成ソフトが冬商戦で順調に推移している。早期キャンペーンやプロモーションの強化など、販売促進策に力を注いで新規ユーザーを獲得した成果が現れた。岡野正幸・筆ぐるめ推進室長は、「成熟市場であるはがき作成ソフトの需要を掘り起こすためには、店頭販売を強化することが重要」と考えている。ユーザーを増やすことで、新規事業への参入も視野に入れているようだ。 佐相彰彦 取材/文 ミワタダシ 写真

はがき作成ソフトが順調 新規事業の開拓も視野に

 ――今年の冬商戦向けに発売した「筆ぐるめVer.14」の販売状況は。

 「順調だ。立ち上がりの10月は、販売本数で前年同月比20%増となった。出荷ベースでは40%増と大幅に伸びている」

 ――増えた要因は。

 「キャンペーンが功を奏した。発売日の9月15日から10月31日までに購入すれば、アップルコンピュータの『iPod nano』が抽選で当たるといった内容だ。最近のユーザーは、はがき作成ソフトの発売時期である9月ではなく、12月に入らなければ購入しないといった傾向が高まっている。そこで、早い時期にユーザーが食指を動かすようなキャンペーンを打つ必要があると判断した」

 ――初の試みとしてイメージキャラクターを起用してプロモーションを行った。効果は出ているのか。

 「家電量販店やパソコン専門店からは、店頭で露出しやすいとの声があがっている。『筆ぐるめ』のコンセプトである“たのしく、かんたん、きれい”のイメージにぴったりである女優の近野成美さんをキャラクターとして起用し、ユーザーの購買意欲を高めるようなポスターやカタログなど販促物の作成に力を注いだ。これにより、他社からの乗り換えユーザーも増えている」

 ――製品の機能面ではどのような点を強化したのか。

 「操作の仕方を教える『ナビゲーション機能』に加え、操作したい機能が一目で分かる『メニューバー』や、裏面の作成をサポートする『補助画面機能』などの追加で操作性を大幅に改善したことだ。はがき作成ソフトのユーザーは、旧バージョンやバンドルソフトのアップグレードとして購入する傾向が高い。しかも、当社製品のユーザーは40代から50代の男性が圧倒的に多い。そのため、使いやすさを追求した」

 ――10-12月の販売本数の見通しは。

 「今年の冬商戦は、幸先のよいスタートを切ったことと、年末にかけて再び需要の増加が期待できることから、20万本は販売できると確信している」

 ――ここ数年、はがき作成ソフト市場が縮小傾向をたどっている。事業を拡大していくための策はあるか。

 「現段階では、事業領域を広げることを詰めているのが実情だ。インターネットとソフトを連動させることを視野に入れているが、年賀状用のレイアウトなど素材をインターネットでバージョンアップできるというサービスを提供しても、ユーザーにとっては付加価値とはならないだろう。しかし、はがき作成ソフトの住所録を管理するサービスはビジネス拡大につながるとみている。当社のデータセンターにユーザーが住所録の管理をアウトソーシングする。ユーザーは、その住所録をIDとパスワードなどでパソコンや携帯電話、PDAなどインターネットがつながる端末であれば閲覧やダウンロード、更新が行える。こういったサービスの提供を模索している」

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■市場は3強で85%以上のシェア

 はがき作成ソフト市場は、クレオとアイフォー、富士ソフトの3社で85%以上のシェアを占めており、寡占状態が続いている。11月6-12日のメーカー別販売本数シェアは、クレオが45.4%、アイフォーが28.0%、富士ソフトが12.5%だった。なかでも、トップに君臨し続けているクレオは、常に40%以上のシェアをキープしており、圧倒的な存在感をみせている。

 富士ソフトは、上位3メーカーの地位を維持しているものの、15%以上のシェアを獲得するまでに至っていない。今年春には4位に後退するという事態も発生した。これは、パソコンへのバンドルがはがき作成ソフトのメイン事業であることから、他社と比べ販売促進が弱かったことが原因のようだ。そのため、今年の冬商戦に向けてプロモーション活動などを強化。12月の年末商戦ピーク期には、シェア争いが白熱しそうだ。

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