大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>26.次世代DVDを巡る、もうひとつの争い

2006/11/27 16:51

週刊BCN 2006年11月27日vol.1164掲載

 ある業界関係者から資料を入手した。ここには、DVDプレーヤーの国別占有率推移が示されている。

 DVD規格は、DVDフォーラムで決定され、東芝が中心的役割を担って普及させてきたのは周知の通りだ。それを証明するように、1998年当時は日本のメーカーシェアが95%と、世界においても圧倒的ともいえる地位を獲得していた。

■高まる中国製品のシェア

 だが、00年から中国企業が台頭しはじめる。潤沢な労働力を背景に、年を追うごとに中国企業の世界シェアは拡大し、05年には49%を占めた。これに対して、05年における日本の企業のシェアはわずか22%。7年間で70ポイント以上もシェアが縮小した。逆算すれば、毎年10ポイントずつシェアを落とした計算だ。

 実際、米国の量販店店頭での価格差をみれば、この逆転は当然といえる。国産メーカーのDVDプレーヤーの価格が89ドルであるのに対して、中国企業の製品は、35ドルと圧倒的な価格競争力を持っているのである。

 技術の策定などにおいて、日本の企業が努力を続け、先行者利益を確保することはできたはずだ。だが、普及期に入った段階で、日本はその果実を得ることはできなかったともいえよう。

 しかも、中国企業の純粋な努力であれば、それも納得できる。しかし、実態は企業努力という側面だけではないようだ。

 ある業界関係者は次のように語る。「DVDフォーラムが日米欧・中国の各市場において、中国メーカーのDVD関連製品を買い上げて検証したところ、100機種中76機種がライセンス未取得、同じく76機種が規格非準拠、マルチリージョンに対応したCSSコンプライアンスルール違反が47機種にのぼったという。ライセンス契約が中国では有効に働かない実態を示した」。

■特許料の不払いが競争力に?

 一方、別の関係者は、「東芝、松下、日立、三菱、日本ビクター、米タイムワーナーのDVD関連メーカー6社で構成される6Cは、DVDドライブに対する特許料支払いを中国メーカーに申し入れ、CAIA(チャイナ・オーディオ・インダストリーズ・アソシエイション)傘下の企業とライセンス契約したものの、実際に特許料を徴収できたのは、総生産量の約10%にとどまっている」と語る。

 つまり、特許料などの支払いを逃れていることが、中国企業の価格競争力につながっていると指摘するのだ。

 光ディスク市場は、次世代メディアへと移行しようとしている。Blu─ray Disc陣営、HD DVD陣営ともに、DVD同様、主導権を握っているのは日本の企業だ。

 現在、中国では、独自の次世代メディアの規格を策定しようという動きがあり、HD DVD陣営が、これに協調する動きをみせている。中国の生産力を生かして、全世界に低価格のプレーヤーを普及させるという施策は、ユーザーにとっては喜ばしいことだ。だが、日本が開発した技術が、日本の企業に還元されないままでは、意味がない。

 次世代DVDについては、DVDの二の舞にならないような手の打ち方が求められている。
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