大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>25.前年割れを余儀なくされるPC市場

2006/11/20 18:44

週刊BCN 2006年11月20日vol.1163掲載

 電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2006年度上期(4─9月)の国内パソコン出荷統計は、3年ぶりの前年割れという厳しい内容になった。

 パーソナルコンピュータ事業委員会・山本正己委員長(富士通経営執行役)は、個人需要の落ち込みが激しいことを指摘。「薄型テレビや旅行、携帯電話、レジャーといったPC以外のところに個人消費が分散した」ことをその理由にあげた。

 同協会関係者も、「企業需要は前年同期比ほぼ横ばいで推移しているが、個人需要は前年比10%前後減少しているはず」と分析する。

 企業需要では、クライアントPCのリプレースが中小企業にも広がりを見せたこと、経済環境の回復感もあり、情報化投資に前向きな企業が増加したこと、情報漏えい事件などを背景に、セキュリティに対する需要が高まるなど個人需要の低迷とは裏腹に、プラス要素が相次いでいる。この傾向は下期も続きそうだ。

■第3四半期終了後に下方修正?

 JEITAでは、年間出荷見通しとして、前年比5%増の1350万台を予想しているが、「この数字は第3四半期終了時点で、改めて検討する」として、現時点での修正は見送った。同協会の出荷統計では、慣例として、第3四半期終了後に修正を発表する。今年度もそれに倣ったことになるが、業界関係者の間では、「下方修正は必至」との見方が支配的だ。

 上期が前年同期比4%減の597万5000台と、予想外の前年割れ。通期見通しの1350万台への到達には、下期に前年同期比2ケタ増という高い成長率での出荷が必要となる。

 だが、1月30日のWindowsVistaの発売までは、PCの買い控えが見込まれること、ソニー製リチウムイオン電池の回収問題を背景に、ノートPCの売れ行きがやや鈍化していること、バッテリーの安定供給が厳しいと見られていることに加え、個人需要には回復要素が見あたらないこと、企業需要拡大の起爆剤がないことなど、PC業界を取り巻く環境は厳しいといわざるを得ない。

■Vista投入でも下期回復は困難

 「個人需要に関しては、小中学生や女性、アクティブシニア層のPC利用の増加などによって、一家に1台から、一人に1台へと変わってきている。また、一人で複数台を所有するといった使い方も出てきている。デジタル動画、双方向通信の利用など、PCの新たな価値を生み出すことで今後の需要増加につなげたい」と、同協会では語るが、これが個人需要回復の原動力として、短期的に効果を発揮するのは難しそうだ。

 また、Vista発売前のアップグレードキャンペーンも、買い控え傾向払拭の打開策と位置づけられるが、あくまでも需要の前倒しであり、買い控えの影響を、最小限に抑える役目にしかならない。

 一方で、価格下落や部材高騰という要素も、各社の収益確保に重くのしかかってくる。

 すでに、PCメーカー幹部の間からは、「上期の落ち込みを下期でカバーすることはできないだろう」とする声もあり、下方修正どころか、通期の前年割れを予測する声もあがっている。
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