臨界点

日本CA SMB&コンシューマー事業本部 事業部長 長谷一生

2006/11/13 18:45

週刊BCN 2006年11月13日vol.1162掲載

 2005年4月、日本CAはコンシューマ向けセキュリティソフト市場に参入した。1年半が経ち、10月に発売した新版では製品名を変えラインアップも一新、値下げにも踏み切るなど競合他社よりも積極的な展開が目立つ。数々の企業買収を重ねて揃えたセキュリティ技術が武器になるのは確かだが、低価格製品が台頭し、大手企業が参入してくる市場でどう戦うのか。コンシューマ事業の立ち上げから指揮を執る長谷一生・SMB&コンシューマー事業本部事業部長に聞いた。 木村剛士 取材/文 大星直輝 写真

製品名、ラインアップを一新 来春にはシェア10%確保を目指す

 ――市場参入後約1年半が経った。振り返って実績をどうみている。

 「順調だ。10月に販売した新版の販売本数は、前週比50%増で伸び続けている。2年目は一貫して対前年比を上回り、2倍成長している時期もある」

 ――家電量販店などの店頭販売シェアは2%にも達していないが。

 「全ユーザーのうち、店頭での獲得は約20%。80%はダウンロード、PCバンドル、ネット接続サービスとのセット販売が占める。そのため、店頭シェアは低い。ただ、店頭を軽視しているわけではない。店頭販売は知名度向上や顧客からの指名買いを促進させる効果があり、単純にユーザーを獲得するだけのチャネルではなく、強化分野だ。店頭はコストがかさむし、新規参入者が簡単に売り場スペースを確保できるわけではないが、地道にCAの製品力をアピールする。来春には店頭シェアを10%に引き上げたい」

 ――新版では、新製品を加えたほかラインアップを一新した。こだわった点は。

 「新製品としては、設定情報も含めたPCのデータ移行とバックアップ機能の新プロダクトを加えた。PCを2-3台持つ家庭が今後必ず増える。買い替え・買い増し時に、データを移行したいとのニーズが出てくるはずだ。その需要に応える。前バージョンと大きく変えたのはGUIだ。CAはスパイウェアやスパム、ファイアウォールなど各分野でトップクラスの技術を持つメーカーを買収し、製品力を高めてきた。しかし、前バージョンまではそれぞれに統一感がなかった。新版ではこの問題を解決した」

 ――値下げにも踏み切った。

 「データ移行・バックアップ機能を除いた、主力の総合セキュリティソフトは、前バージョンの特別優待版に比べ約1400円下げて5600円とした。3ユーザーパックはもっと価格を下げている。今後は複数ライセンスパックが売れ筋になるとみているからだ。競合他社の動きをみて、戦略的価格とした」

 ――ソースネクストの更新費用0円ソフトがヒットし、来年にはマイクロソフトが参入予定だ。どう対抗する。

 「ソースネクストの伸びには正直驚いているが、価格勝負はしない。あくまで品質の良さをアピールする。マイクロソフトについても製品力で十分勝っている。マイクロソフトはあくまでOSメーカー。セキュリティのプロ集団ではない。マイクロソフトは米国市場ではすでに参入しているが、影響は出ていない。量販店でも積極展開していない。資本力があるので、本気でプロモーションを仕掛けてくれば脅威にはなるが、日本市場でも米国同様の展開なら影響はないだろう」

 ――参入2年目も後半に入った。シェア獲りに向けて今後はどう戦う。

 「大前提として品質の向上を図る。そして、『Windows Vista』が登場する段階では製品強化とプロモーションの両面で新たな施策を打つ。米本社を中心にワールドワイド共通の新戦略を打ち出す予定だ」

Corporate PROFILE

 日本CAは、今年6月1日にコンピュータ・アソシエイツから社名を変えた。コンシューマ事業では、前バージョンは法人向けセキュリティソフトブランド「eTrust(イートラスト)」を採用していたが、CAを統一ブランドとして各製品名に加えた。パッケージデザインも一新し、値下げも断行。ブランドカラーも青から白へと変更した。参入2年目後半で再スタートを切ったことになる。

 店頭シェアは、BCNランキング(10月23-29日の週次データ)によると、本数1.5%、金額0.9%と5位に甘んじる。ただ、長谷事業部長は、「ソースネクストはシマンテック、トレンドマイクロの寡占市場を壊した。戦略次第でシェアも一気に上げられるはず」と来春のシェア10%超えに意気込みを示す。
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