臨界点

イーフロンティア 取締役メディア本部長 長谷川 新多郎

2006/10/30 18:45

週刊BCN 2006年10月30日vol.1160掲載

 イーフロンティアは、3Dグラフィックスソフト「Shade」や3Dキャラクター作成ソフト「Poser」などのパッケージソフトベンダー。2004年にアイフォーを子会社化したことによって、ハガキ作成ソフト「筆王」もラインアップに加えた。「筆王」は現在、イーフロンティアグループの代表的製品となっている。ハガキ作成ソフトは、激戦の舞台となる冬商戦に突入する。販売戦略を長谷川新多郎取締役に聞いた。 田沢理恵 取材/文 川崎ナナ 写真

新規ユーザーの獲得に自信 今年の冬商戦は「筆王」で首位狙う

 ――いよいよ冬商戦の佳境を迎える。

 「今年は、新製品発売日の9月15日から12月31日までの冬商戦でシェア41.5%の獲得を目指している。当社が狙うのは、パソコンを初めて購入した人や、年賀状を印刷に出す人、メールで年始の挨拶をしている人などを対象に、新規ユーザーを獲得することだ。昨年の商戦でも、新規ユーザーの獲得数は、ライバルよりも多かったというデータもあり、自信をもっている」

 ――具体的な取り組みは。

 「ユーザーに安心して使ってもらえるようにサポート体制の拡充を図る。毎年11月に入ると問い合わせが増えるが、この時期までにサポートスタッフを増員するほか、ウェブサイトのFAQ(よくある質問とその回答集)を充実させる。また、イラストのダウンロードサービスを本格的に開始した。機能面では、宛先や賀詞などを薄いインクで印刷し、その上から筆ペンでなぞり書きできる機能をつけた。ユーザーが楽しんで年賀状をつくれるように取り組んでいる」

 ――グラフィックソフト「Shade」については。

 「『Shade』は、プロ向けから1万円前後のベーシック版までを揃えており、近年はユーザーのすそ野が広がってきている。昨年から本格的に開始した学生向けの『Shade奨学金制度(Shadeを利用した優秀作品の作者に奨学金を給付する制度)』には、専門学校生や大学生のほかに中学生からの応募もあった。3Dソフトのユーザー層は、一部の人たちに限られていると考えていたが、パソコンが鉛筆やペンのように日常の道具になってきていることを考えると、3Dソフトに抵抗なく入っていける人たちが増えるという実感を得ている」

 ――Shadeユーザー拡大のチャンスだと。

 「大人が算数の計算をするなど脳トレーニングソフトの人気が出ている。その視点で考えれば、マウスを使って自由な発想を画像にできる3Dソフトも、限られたユーザーだけでなく、一般の人が楽しめるソフトといえる。ただ、当社がストレートに『Shade』を使うと脳が活性化できます、などとアピールすることはできない。隠れた良さにとどめておく」

 ――とはいえ、隠れた良さを多くの人たちに知ってもらいたいのでは?

 「こうした楽しみ方は、ユーザー間の情報交換から伝播させたい。そのためにも、自社でSNS(コミュニティ型のWebサイト)を開発している。メーカー側からの情報発信だけでなくユーザー同士がコミュニティを通じて助け合うような仕組みをつくる。このSNSは現在準備中で、今年度中にスタートする計画だ」

 ――グループ全体では、どんなソフトに注力していくか。

 「『筆王』や『Shade』などのほか、動画関連ソフトに注力していく。また、低価格ソフト『イープライスシリーズ』のラインアップ強化を図っていく。これまで高価で手が出なかったソフトでも、ちょっと使うには最適という機能を自社、他社のソフトを含めて安価に提供することで、ユーザーの間口を広げたいと考えている」

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■冬商戦に向けて熾烈な争い

 ハガキ作成ソフト市場でシェア2位のアイフォー(イーフロンティア)は、今年の冬商戦で首位の座を奪うと鼻息が荒い。

 同社は9月15日に新製品を発売し、冬商戦の幕を切って落とした。発売日直後(9月18-24日)からの製品別シェア推移をみると、クレオが56.1%を獲得し、2位のアイフォーは大きく水をあけられていた。しかし、10月9-15日にはクレオが49.4%にシェアを落としており、両社のシェアの差が若干縮まっている。

 年賀状作成ソフトは、9月から各社が順次新製品の販売を開始し、年末にかけて商戦が本格化する。昨年12月のBCNランキングによると、市場全体の販売本数は、10月(昨年)の約4.9倍。同市場は、需要が頂点に達する12月が勝負となる。10月現在のシェア争いでは、まだ勝敗は見通せないが、激戦が繰り広げられるのは間違いない。

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