大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>22.ソニーのバッテリー問題で次期社長人事が浮上

2006/10/30 18:44

週刊BCN 2006年10月30日vol.1160掲載

 ソニーのノートPC向けリチウムイオン電池の自主回収問題が、当初想定されたものよりも、大きな規模となっている。

 デルやアップル、東芝、レノボ、富士通などに加え、ソニー自らもVAIOシリーズでバッテリーを回収することを発表。

 全世界規模で約960万個が対象になった。

 合計すれば、日本の年間PC出荷台数の約8割と同等規模の台数の回収が見込まれるという計算になる。

 また、東芝による損害賠償請求の問題もあり、約510億円ともいわれる回収費用に加えて、訴訟関連費用などが計上されれば、ソニーの業績への大きな影響は避けられない。

■揺らぐ「モノづくりの原点」

 こうしたなか、関係筋で急浮上しているのが、ソニーの次期社長人事だ。

 ハワード・ストリンガー会長、中鉢良治社長体制になって約1年半を経過したが、「モノづくりの原点に戻る」としたその基本方針が根底から揺らぐような出来事が相次いでいる。

 バッテリー回収問題をはじめ、ブルーレイ関連部品であるレーザーダイオードの歩留まり率があがらないことを背景に、欧州地区でのプレイステーション3の発売を延期。

 また、12月に出荷を予定しているブルーレイレコーダーが2層メディアの録画に対応しない仕様で発売されたことも、その一例といえる。

 「技術面で後れをとっているとのイメージを一新するためにも、ストリンガー・中鉢体制を刷新する必要がある」との声が関係者の間から出るのも当然といえる。

■迫る?試合終了時刻

 ところで、次期社長候補の筆頭とされるのは、エレクトロニクス事業を統括する井原勝美副社長、そして、プレイステーション3の発売を間近に控えたソニー・コンピュータエンタテインメントの久多良木健社長であるのは、多くの人に共通した認識だろう。

 そして、この2人を候補とした新社長人事が近々あるとの見方は、こんな観点からも感じることができる。

 1950年生まれの2人は、来年、57歳となる。57歳という年齢は、出井伸之氏がCEOに就任した年齢であり、中鉢氏が社長に就任した年齢でもある。

 ソニーの社長人事という観点では、当たり年の年齢なのだ。 昨年、中鉢社長の就任直後にインタビューをした。その際、中鉢社長は「就任した時に、まず退き方を考えた」と語った。「試合には時間がある。その時間が終了したときに、後悔をしたくない」と、スポーツに例え、自らの社長としての役割を時間で区切ってみせた。

 そこで例に出したのが柔道。6分間という試合時間は、たとえ話としても、試合時間が短いと感じざるを得ない。

 このたとえ話からも、中鉢社長自身が、自らの政権が長期とは思っていないのではないかという推測ができる。

 こうしてみると、社内、社外の状況を含めて、早ければ来年に社長交代があるのを感じざるを得ない。それを裏づける条件が、揃いつつあるとはいえまいか。
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