臨界点

シャープ 専務取締役 国内営業本部長 大塚雅章

2006/10/16 18:45

週刊BCN 2006年10月16日vol.1158掲載

 液晶テレビで圧倒的なシェアを誇るシャープ「AQUOS」。そのAQUOS事業を国内営業の観点からけん引する大塚雅章専務取締役は、あえて「挑戦」という言葉を口にする。液晶の王者シャープが、なぜ、「挑戦」なのか。そして、シャープの年末商戦の液晶テレビ戦略の狙いはどこにあるのか。 大河原克行(ジャーナリスト) 取材/文 井手口恵子 写真

大画面に打って出る体制が整った プラズマをしのぐシェアを獲得する!

 ――薄型テレビで国内トップシェアを誇るシャープの今年の戦略は。

 「一言でいえば、『挑戦』だ」

 ――挑戦とは?

 「今年8月から亀山第2工場を稼働させた。この工場では、第8世代と呼ばれる液晶パネルの生産が可能で、これは、46インチならば8面取り、52インチならば6面取りを、最も効率的に行える。つまり、大画面テレビの生産で最も効果を発揮する工場だといえる。これまで、シャープは、40インチ以上の分野では、コスト競争力が弱かったが、亀山第2工場が稼働したことで、それが一気に解決できた。しかも、37インチ以上では、すべての製品をフルスペックハイビジョンでラインアップできる。コントラスト、動画応答性、視野角といった液晶テレビの技術的課題もすべてクリアした。つまり、大画面テレビ分野に本格的に打って出られる体制が整ったわけだ。だからこそ、今年は『挑戦』であり、新たな市場での『勝負』ということになる」

 ――店頭展示も変更している。

 「2001年1月にAQUOSの第1号機を投入して以来、店頭展示はそれを改良する形でやってきたが、この年末商戦では5年ぶりに初めて一新した。社内では、『店頭みちがえり計画』と呼び、全国3000店舗を対象に、青基調の展示から、白を基調としたものに変更した。さらに、亀山第2工場によって実現する大画面テレビ戦略にフォーカスした展示とした。フルハイビジョンの良さや、液晶が持っていた課題が解決したことを訴求するとともに、AQUOSファミリンクによる使いやすさも訴求する。加えて、新たなリビング空間の提案にも取り組む」

 ――リビング空間の提案とは。

 「AQUOS INTERIAの名称で、液晶テレビ向けの家具を用意する。これは主要な150店舗での展示となるが、AQUOSのデザインも手がけたインダストリアルデザイナーの喜多俊之氏が中心となり、インテリアメーカー6社から25種類の家具を製品化、これをシャープが仕入れて、店頭で販売する。40インチ以上の大画面テレビになると、壁掛けをやってみたいというユーザーが約4割を占める。だが、部屋の改造や工事が面倒だとか、壁が丈夫ではない、壁掛けにすると模様替えに困るといったことで断念している人も多い。AQUOS INTERIAでは、「壁寄せ」という設置方法を提案し、見た目は壁掛けのような設置を可能にした。こうしたソリューション提案が必要であり、これも大画面化のなかで取り組んでいる新たな仕掛けのひとつだ」

 ――年度末の目標は。

 「37インチ以上の薄型テレビ市場では、プラズマと液晶の比率が45%対55%。これを液晶テレビが6割を占めるところにまで引き上げたい。そのなかで、シャープは50%以上のシェアを獲得することを目指す。シャープ全体の出荷のなかでも、32%が37インチ以上になるとみている。プラズマに比べて見劣りするところはなにもない。それが、今年の年末商戦のシャープの液晶テレビの強みだ」

DATA FILE
■40インチ以上へのシフトが焦点

 大塚専務の語るとおり、今年末商戦では、40インチ以上の大型液晶の比率をどこまで高められるかが、メーカー各社の大きなテーマといえる。

 9月1-20日までの販売データで、サイズ別の構成比をみると、40インチ以上はまだ8.2%にとどまっている。液晶テレビは低価格化が進むなかで、この1年、32インチから37インチへのシフトを進めることで、価格維持を図ってきた。

 しかし、W杯以降の在庫調整局面で、30インチクラスの価格が大幅に低下。平均単価を引き上げる意味でも、40インチクラスへのシフトを段階的に進める必要に迫られている。

 第8世代の生産ラインが本格稼働を始めるなかで、このクラスの大画面テレビを、いかに低価格で大量に提供できるかが、今後の薄型テレビ市場の成長を大きく左右する。

  • 1