大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>20.番号ポータビリティ、ドコモが守り通すのも限界か
2006/10/16 16:51
週刊BCN 2006年10月16日vol.1158掲載
NTTドコモの中村維夫社長は、9月10日から始まったMNP(携帯電話番号ポータビリティ)の事前予約の反応について、こう表現した。
10月24日にスタートするMNPは、携帯電話各社にとっては大きな転換点になる。とくに、「守る立場」を余儀なくされるNTTドコモは、チャンスよりもリスクと見る業界関係者は少なくない。そのなかで、事前予約が静かな船出というのは、ドコモにとっては、プラス要素と見ていいだろう。
だが、手綱を緩めるわけにはいかない。
■攻めのau、ソフトバンク
「8月の解約率は0.60%と過去最低の水準。これは、MNPを控えたものと見るのが自然。年間では0.85%の解約率になると想定している」と、今後、MNPが及ぼす大きな影響を予想する。
一方、追う立場にあるau、ソフトバンクモバイル(ボーダフォン)にとっては、MNPは明らかに「攻め」となる。
auは、いち早く新端末や新サービスを発表。MNPのテレビCMを大量に流し、顧客獲得に挑む。 ドコモの中村社長は、「MNPは攻めなのか、守りなのか、と言われるが、どちらにしても料金、端末、サービスといった基本的部分を整えないことには意味がない。これが揃えば自ずと攻めになる」と語る。
とくに課題と指摘されていたFOMAの人口カバー率が、今年秋にはいよいよmovaを超える。屋外で1万800局、屋内で3000局という年度内の基地局設置目標に対しても、「計画に対して50%を超える進捗率。予定通りに進んでいる」と語る。重点地域としてあげているJRの駅前や駅周辺地域への基地局設置のほか、大学、短大、高専などへの設置も、9月中にはほぼ完了したという。
■全方位の守り迫られるドコモ
さらに、FOMAのカバー率拡大を効率的に行うために、新聞広告やテレビCMを利用して、つながらない地域をユーザーから通知をしてもらうキャンペーンを展開。「1回目の告知では約7000件の声が集まった。このうち約6割が基地局を設置する予定のエリアだったが、今後もこれらの声を反映して、基地局の設置を進めたい」と、これまでのドコモらしからぬ展開も開始している。
ドコモは、トップメーカーとして、全方位の守りが求められている。
自らPC-9800シリーズの陣頭指揮を執り、トップシェアメーカーの守りの難しさを知っているソフトバンクモバイルの富田克一副社長は、「ドコモの戦略、悩みが手にとるようにわかる」と、自らの経験から指摘する。
追うメーカーの戦略は、それが的を射たものであれば、一点突破でもかまわない。携帯電話の差別化範囲は、インフラ、端末、サービス、コンテンツのあらゆる分野に広がっており、言い換えれば、一点突破の材料はたくさん転がっている。一方、守りの材料は、家族割、長期割引などの料金プランと、メールアドレスの非継続性につきる。
ドコモが守りを鉄壁とするには、限界があるといったほうがいいかもしれない。残された答えは攻めるだけ、ということになる。
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