臨界点

オートデスク 志賀徹也社長

2006/10/09 18:45

週刊BCN 2006年10月09日vol.1157掲載

 大手CADソフトメーカー、オートデスクの次の一手は3次元CADの普及だ。需要拡大を狙ってパッケージ販売するほか、サービスを含めたシステムの提供に力を注ぐ。販売代理店とのパートナーシップを深めるため、2007年早々には販売支援プログラムを大幅に刷新する計画だ。3次元CAD市場は黎明期から普及期に向かいつつあり、需要増大のステップを間近に控えている。こうした市場環境のなか、同社は成長路線の維持に向けた新しいステージに立った。 佐相彰彦 取材/文 ミワタダシ 写真

3次元CADが黎明期から普及期へ 販売代理店制度の強化で成長を加速

 ――今年度(07年1月期)上期の業績は。

 「CADソフト市場は成長がややスローになっているが、業績は順調に伸びている。ワールドワイドでは、売上高が第1四半期で前年同期比23%増、第2四半期で21%増になった。国内は、ワールドワイドほどではないものの、第1四半期と第2四半期ともに前年同期を上回った」

 ――業績が伸びた要因は。

 「CADソフトユーザーの多い製造業をはじめ、建築や土木、ユーティリティ業界などの好景気が追い風になっている。この状況は、下期に入っても変わらず、いぜんとして好調な売り上げが期待できる」

 ――現状での課題があるとすれば。

 「3次元CADの普及だ。現段階では、航空や自動車などの業界で3次元CADソフトを活用するケースが増えているものの、普及率は15%程度に過ぎない。設計が図面からモデリング手法に変わりつつあるなか、3次元CAD市場が黎明期を過ぎて普及期に入ろうとしている。普及率を高めるには、いまだ2次元CADの活用が多い業界で、3次元CADの利便性を訴えていくことが重要となる。当社にとってはビジネスモデル転換の時期を迎えている」

 ――3次元CADを浸透させるための策とは。

 「導入事例を増やすことに尽きる。そこで、販売代理店とのアライアンスで3次元CADベースのソリューション提供を加速させる。パートナーシップを強固なものにするため、07年早々には販売代理店制度を大幅に刷新する」

 ――代理店制度をどう変えていくと。

 「具体的なことは今後詰めていくが、ソフトのパッケージ売りが中心なのか、システムで提供していくのかによって支援プログラムを用意する予定だ。システムパートナーに対しては、ソリューション提案に向けて教育トレーニングを行うほか、共同開発を手がけることも検討している」

 ――販売支援プログラムの策定は、ワールドワイドで取り組んでいるのか。

 「その通りだ。ワールドワイドでは、昨年から『オートデスク3.0』というコンセプトを掲げて新しいステージに立とうとしている。これまでを振り返ると、設立から10年間は第1ステージとしてCADソフトの普及に力を注いだ。第2ステージでは、ソフトのラインアップ拡大で売り上げを成長軌道に乗せた。こうした基盤をつくることで、ここ4-5年で業績が急激に伸びている。そして、今は第3ステージとして3次元CADを普及させることを目的に、ソフトのパッケージ販売だけではなく、ソリューション提供の拡大を図っているというわけだ」

 ――具体的な業績目標は。

 「今年度は、ワールドワイドで売り上げを18億ドル(日本円で約2100億円)と見込んでいる。これを2010年には、30億ドル(約3500億円)まで引き上げていく。3次元CADは、普及すれば爆発的に需要が増えるポテンシャルを持っている。できるだけ早い段階で市場を確立するためには、当社と販売代理店の双方が業績を伸ばせるサイクルの構築が重要と確信している」

DATA FILE
■店頭販売でシェア50%を維持

 CAD・生産管理ソフトの店頭販売は、オートデスクがトップに君臨している。BCNランキングによれば、9月18-24日のメーカー別販売本数シェアで50.8%を獲得した。

 製品別でも、オートデスク製品が上位にランクインしているのが目立つ。上位10製品中、5製品を同社が占める。トップは、「Auto CAD LT 2007」シリーズの「コマーシャルスタンドアロン新規製品」で20%以上のシェアを維持している。

 CADソフトの平均単価は6万円以上と、ほかのソフトと比べ高額であることが特徴だ。加えて、店頭でのCADソフト購入者は、個人ユーザーより建築士やSOHOの設計事務所などが中心で、業務で活用することから新しいバージョンが発売されれば購入するケースも多い。そのため、家電量販店やパソコン専門店にとっては売上増につながる製品といえる。

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