臨界点
東芝シンガポール 中山純史社長
2006/10/02 18:45
週刊BCN 2006年10月02日vol.1156掲載
薄型テレビの需要は世界に広がる 成長著しいロシアやインドの市場に本腰
――現在最も力を入れているエリアは。「ロシアだ。この1-2年で薄型テレビの販売台数が急激に増加している。国土が広いういうえ若年人口が多く、購買力はダントツ。都市部に住んでいる人が、英語を話せることもあり、きわめて魅力的な市場だ。現在、薄型テレビはサムスンやLGが一番売れている。東芝のマーケットシェアはまだ1ケタ台だが、日本企業のなかでは最も早く現地法人を立ち上げ、体制の強化を急いでいる。テレビに限らず幅広い製品ラインアップと販売ネットワークを武器に、まずは2ケタ台、12-13%の販売シェア獲得を目指す」
――インドやベトナムも期待できそうだが。
「2006年の販売台数見通しでは、ブラウン管テレビは対前年比約4割減。薄型テレビは3倍に伸びる見込みだ。現状ではTSPのカバーエリア全体ではまだブラウン管型のほうが多いが、逆転するのは時間の問題だろう。例えば8300万人の人口を擁するベトナムでは、現状で約9割がブラウン管型。しかし所得水準は着実に上がってきておりテレビの普及率も100%近い。いったん薄型への買い替えブームが起きれば、きわめて大きな需要が期待できそうだ。そのほか、インドも重要拠点のひとつ。今年に入って競合各社の動きも激しくなってきた。現状ではロシアと同じく『サムスンとLGの牙城』だが、TSPでも近くテレビとパソコンの本格的販売を開始する予定だ」
――広範なカバーエリアがビジネスに与える影響は。
「物流の問題は大きい。ほとんどすべてをインドネシアのジャカルタ工場で生産し、シンガポールを経由して世界に製品を送り出している。ロシアには海路と陸路で1か月以上かかる。同じく薄型テレビが好調な南アフリカにも海路で約1か月。物流コストは大きな比率を占める。効率的な梱包がコストダウンに響いてくる。1個のコンテナに何台積めるかといった輸送効率は直接コストに響き、商談にも大きな影響を及ぼす」
――「REGZA」ブランドの位置づけは。
「いわば、『デジタル薄型テレビの世界共通ブランド』。TSPでは毎年、担当各国の販売店や現地法人を招いて新製品の紹介や販売成績の表彰などを行うイベント『ワールドツアー』を開いている。今年も8月25日に、43か国から380人を集めてシンガポールで開催したが、ここでの目玉も『REGZA』。以前は国や地域によってブランド名を変えたりしていたが、ブランドをひとつにしたほうが特徴などを伝えやすい。世界全体で情報格差がなくなってきた現状も考え、こうしたブランドの一本化戦略をとっている」
――HD DVD製品の今後の展開は。
「『ワールドツアー』では薄型テレビのほかに、HD DVD製品でレコーダーの「RD-A1」とプレーヤーの「HD-XA1」を参考出品した。現在、HD DVD製品は日本と米国だけで展開しているが、今年のクリスマス商戦には欧州でも販売する予定。TSPの担当エリアでの展開はその後になるだろう」
Corporate PROFILE
東芝シンガポール(TSP)は1974年に Kee Huat Radioとの合弁で設立。米国向けブラウン管型テレビのシャーシ製造や欧州向けラジカセ製造などを経て、1983年にテレビの量産を開始した。その後、子会社として96年に東芝家電製造インドネシア社(TJP)と東芝家電ベトナム社(TVCP)を設立。01年にはTJPモスクワ事務所も開設した。06年3月には効率化のため製造部門をすべてTJPに集約させている。従業員数は約300名。
中山純史氏は、デジタルメディアネットワーク社の経営企画部部長を経てこの4月、TSPの社長に就任した。
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