大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>17.MSが指摘する「日本が抱える4つの情報格差」
2006/09/25 16:51
週刊BCN 2006年09月25日vol.1155掲載
国民の所得格差を背景にしたデジタルデバイドに悩む国がある一方、ネットワークインフラの整備状況から生まれるデジタルデバイドを問題とする国もある。
日本の場合は、かなり恵まれた状況にある。貧富の差や、ブロードバンドインフラの格差を背景としたデバイドは、ほとんど存在しないといっていいだろう。
では、日本におけるデジタルデバイドとはなにか。
■学校と政府に見られる格差
「全世界と比較した時に、日本には、4つの観点からデジタルデバイドがある」と語るのは、マイクロソフト(MS)のダレン・ヒューストン社長だ。
ひとつは、教育機関におけるデジタルデバイドだ。日本の教育機関におけるPC導入状況を見ると、小中学校や高校での導入率は高く、一見、進展しているように見えるが、実際の利用環境は欧米に比べてかなり遅れている。小中学校では、鍵のかかったPC教室にのみ、1クラス分の台数が導入され、しかもPCを活用した授業の数は年間でも限られている。また、PCを使った授業を行える教師は7割強との調査結果が出ているが、実際にPCを使った授業を行っている教師は極めて少ない。
2つめは、政府機関におけるデジタルデバイドだ。
e-Japan計画により、日本の電子政府化は進展したようにみえるが、IT導入の促進やネットワークインフラの整備が進んでいるのとは裏腹に、活用面ではまだ改善しなくてはならない余地が大きい。ヒューストン社長自身、日本で自動車運転免許証の書き換えを行ったというが、その際に、手作業での処理があまりにも多いこと、それによって時間がかかることに閉口したようだ。ここでも欧米諸国に比べてデバイドがあるという。
■中国に劣る中小企業のIT投資
3つめは、中小企業におけるデジタルデバイドだ。
一部調査によると、日本における中小企業のIT化は、中国の中小企業よりも遅れているとの結果があるという。中小企業の競争力を高めることは、そのまま日本経済の競争力強化に直結するのは明らかなだけに、中小企業のIT武装化は大きな課題といえる。
そして、最後がNPOにおけるIT活用、およびそれを企業が支援していく姿勢の確立だ。NPOを通じて社会的に困難な状況に置かれている人たちに対して、ITを活用した支援が必要だとヒューストン社長は訴える。マイクロソフト日本法人でも、NPOに対する支援額を倍増するなど、積極的な投資を進めている。
こうしたヒューストン社長が指摘する日本のデジタルデバイドの現状を見ると、同社が日本市場向けに立案した中期経営計画「PLAN-J」で掲げた戦略と合致する部分が多い。
2年目に入ったPLAN-Jは、マイクロソフトの成長戦略を描く役割を持つとともに、日本のデジタルデバイド解消戦略だと捉えると分かりやすい。マイクロソフトの投資の多くは、デジタルデバイド解消に向いていることを知っておいたほうがいいだろう。
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