臨界点

アイ・オー・データ機器 代表取締役社長 細野昭雄

2006/09/04 18:45

週刊BCN 2006年09月04日vol.1152掲載

 パソコンの周辺機器メーカーとして発展してきたアイ・オー・データ機器が、デジタル家電周辺機器事業を新たな柱に育てるため、本腰を入れている。将来は「パソコンの周辺機器と家電周辺機器は、限りなく近づいてくるし、つながってくる」(細野社長)と見ており、家電周辺機器にシフトするのではなく、パソコン周辺機器メーカーならではの強みを生かして、ビジネスチャンスを広げていく。 石井成樹 聞き手 田沢理恵 文 ミワ タダシ 写真

デジタル家電周辺機器に本腰 PCでの実績を強みに領域を広げる

 ――パソコン周辺機器だけでなく、デジタル家電関連製品にも力を入れているようだ。

 「本格的に、デジタル家電関連の周辺機器事業を強化し、新たな事業の柱に育てるつもりだ。これまでにハイビジョンハードディスクレコーダー『Rec-POT』や液晶テレビ、ネットワークメディアプレーヤー『AVeL Link Player』などを投入してきたが、今後も当社らしい新製品を開発していく」

 ――直近ではどんな新製品を。

 「9月には地上デジタル放送と『スカイパーフェクTV!』を受信できるチューナーを発売していく。価格はオープンだが、市場価格は3万円前後となるだろう。価格メリットも訴求できる。地デジの視聴可能地域は広がっており、既存のアナログテレビで画質のきれいな地デジを見たいというニーズは高まっているはずなので、そうした層に訴えていく。地デジの場合、コピーは1回しかできないコピーワンスなど規制は厳しいが、世論はこの厳しさに反発し始めているので、規制は緩和される方向に進むだろう。そうなればデジタル家電の周辺機器は、アイデア次第で新しい市場を開拓できるはずだ。脱着式3.5インチカートリッジを採用したLAN接続テラバイトハードディスク『LANDISK Tera』を9月下旬に発売するが、これは当面は企業での需要が中心になるとしても、いずれは家庭への普及も進むはずだ。ハイビジョン映像を保存しておくには、テラバイト級のストレージが欲しくなるはずだからだ」

 ――デジタル家電の競争はパソコン周辺機器以上に厳しいと思うが、どんな成長路線を描いているのか。

 「デジタル家電周辺機器が事業の柱のひとつに育つには、2-3年はかかるかもしれないが、全売り上げの3分の1程度に成長させたいと考えている」

 ――パソコン周辺機器は、2006年上期BCNランキングで4部門を受賞した。特に映像関連ボードは圧倒的な強さを見せている。

 「映像関連ボードは、3年間トップを維持している。トップを獲得しているのはアナログチューナー製品だが、市場では、年末から今年の春をピークに、販売数量は2-3割落ちているだろう。トップシェアは維持しているが、全体の需要が落ちてくるとデジタルチューナーへの移行がカギになる。デジタルチューナーを組み込んだパソコンは発売されているが、単体でのパソコン用デジタルチューナーはまだ登場していない。これは技術の問題ではなく、規制の問題だ。規制緩和の動向を見ながら、年内には発売したいと思っている」

 ――次世代DVDではブルーレイディスクドライブを発売したが、端境期をどのように見ているか。

 「CDからDVDへ移行した時はオーバーラップしていたが、今回の次世代DVDの場合は、市場が立ち上がるにはもう少し時間がかかりそうだ。規格の主導権争い、ドライブ価格の高さ、コンテンツの少なさなどがネックになっているが、ブルーレイとHD DVDの両規格を搭載した商品が登場すれば市場は一気に立ち上がるかもしれない」

DATA FILE
■2006年上期は4部門でシェアNo.1

 アイ・オー・データ機器は、06年上期のBCNランキングで、記録型DVD、MO、映像関連ボード、モデムの4部門でシェアナンバーワンを獲得した。そのうち、映像関連ボード部門ではシェア39.7%を占め、2位のバッファロー(15.2%)を大きく引き離している。

 図は、8月14-20日(22社データ)の記録型DVDドライブメーカー別シェアを表したもの。この部門では、アイ・オー・データとバッファローは4.2ポイント差。製品別シェアの1-2位は、LG電子の内蔵タイプ。3位はバッファローの外付けタイプ、4位がアイ・オー・データの外付けタイプで、各社の競り合いが激しく、混戦状態となっている。

 アイ・オー・データは、今年6月に記録型ブルーレイディスクドライブを発売しており、店頭価格は、現在8万円強。同社の売れ筋となっている「DVR-UN16RL」(9000円弱)に比べて価格は10倍近い製品だ。

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