大河原克行のニュースの原点
<大河原克行のニュースの原点>14.上り速度だけが焦点ではないauのEV-DO
2006/09/04 18:44
週刊BCN 2006年09月04日vol.1152掲載
「現行のEV-DO Rev.Oは、下り伝送速度を高めて、着うたフルなどのコンテンツ配信ビジネスを拡大させた。今度は、EV-DO Rev.Aで、上りの伝送速度を生かした双方向リアルタイム型の新サービスを創出できるようになる」とKDDIの小野寺正社長は語る。
■テレビ電話サービスも可能に
対応端末はまずは東芝製の2モデルだけだが、上り伝送速度の高速化によって、100MBの大容量データの保存が可能な「au My Page」サービスや、アドレス帳を預ける「アドレス帳預けて安心サービス」といったアップロード型サービスを開始する。
もうひとつがテレビ電話サービスである。小野寺社長は、「テレビ電話がどれだけ利用されるのか、個人的には疑問視している」と語るものの、同社では、テレビ電話サービスを12月にも開始し、EV-DO Rev.Aによる新サービスのひとつにする考えである。
こうした新インフラサービスでは、auが明らかに他社を一歩リードしている。
トップシェアのNTTドコモは、この夏からサービスを開始するHSDPAで、下りはFOMAの約10倍となる3.6Mbpsを実現するが、EV-DO Rev.Aの3.1Mbpsを上回る程度。また、上りは64-384kbpsと現行のEV-DO Rev.Oを超えるレベルにとどまる。
「当社の認識としては、HSDPAはEV-DO Rev.Oと同等レベルのサービス。EV-DO Rev.Aと同等のサービスという点では、ドコモが来年以降に予定しているHSUPAまで待たなくてはならないだろう」(KDDI技術統轄本部技術開発本部・渡辺文夫本部長)と強気の姿勢を見せる。
■IPネットの総合サービスへ
だが、その一方でこうも語る。
「EV-DO Rev.Aは、速度競争がどうだとかというレベルのものではなく、当社が提供するオールIP基盤インフラの展開を本格的に開始するという、大きなスケールの話だと受け取ってもらいたい」
EV-DO Rev.Aの特徴のひとつにQoS制御がある。これによって、音声や画像に対して別々のQoSの設定が可能で、混雑時には、テレビ電話の映像保証はしなくても、音声品質に関しては保証するといったサービスができる。
つまり、回線交換方式だった音声通話が、EV-DO Rev.AのQoSおよび新技術によって、IPベースのネットワークインフラでも安定した品質が提供されるようになるというわけだ。
これは、KDDIが目指すオールIP基盤「ウルトラ3G」上で有線、無線、放送をシームレスに、また音声、データを統合した通信環境を実現するための具体的な一歩といえる。モバイル環境からの統合IPネットワークへのアプローチともいえるのだ。
EV-DO Rev.Aを単なる速度向上サービスと見ただけでは、KDDIの一手を見誤ることになる。
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