臨界点

AOSテクノロジーズ 代表取締役社長 佐々木 隆仁

2006/08/14 18:45

週刊BCN 2006年08月14日vol.1150掲載

 システムメンテナンス市場で、AOSテクノロジーズのシェアが伸長している。今年5月のBCNランキングで、本数シェアでシマンテックを抜き2位に、金額シェアではトップを獲得した。パソコンユーザーが何を求めているか、という同社の基本スタンスで考えれば「まだまだやるべきことはたくさんある」。今後は、新ジャンルへの参入や、メーカーを超えた斬新なソフト直販手法も構築していく。 田沢理恵 取材/文 大澤邦彦 写真

顧客が何を求めているかが基本 やるべきことは山ほどある

 ――金額シェアでNo.1を維持している。

 「情報漏えいなど、データの取り扱いが問題になっていることもあり、データ抹消ソフト『ターミネーター』シリーズが伸長している。また、『ファイナルパソコン引越し』シリーズも好調だ。パソコンを買い替えたときに、新しいパソコンにデータを移行するためのソフトだ。他社からも同様の製品が出ているが、当社の製品はアプリケーションも従来の環境でそのまま引っ越せることが特徴だ。ウィンドウズビスタによるパソコン買い替え需要の効果も期待できる」

 ――店頭ではどのような訴求をしているのか。

 「パソコン引越しソフトは、パソコンの購入者がターゲットであるため、パソコン売り場に置いて訴求する活動を始めた。売り場で邪魔にならないように、ミニパッケージを置いている。認知度を高めて、ソフト売り場にいかに誘導するかという取り組みに力を入れている」

 ――本数シェアでのNo.1獲得は。

 「本数シェアにはそれほどこだわっていない。金額シェアは現在20%強でトップだが、これを30%を超えるまでに引き上げて、維持していきたい。本数シェア拡大のために、低価格化して拡販するのであれば、ビジネスにならない。ソフトを作るエンジニアに対価を払う意味を込めて、その価値を顧客に理解してもらうことも重要だ」

 ――今後の製品展開は。

 「まず基本は、顧客が何を求めているかだ。パソコンを買って、その後ユーザーは何をしたいのかを常に考えることが重要。パソコン引越しソフトも、新しいパソコンは欲しいが、アプリケーションやデータの移行作業が面倒というユーザーの悩みを解決するためのソフトだ。さらに、データを引っ越した後は、当然古いパソコンのデータ抹消が必要になる。パソコンは、ソフトがないと何もできないわけで、ニーズを掘り起こせばまだまだわれわれのやるべきことはたくさんある」

 ――例えばどんなことか。

 「パソコンを使った教育に可能性があると見ている。新しい風を起こした脳トレーニングソフトをみても、教育ソフトに新たな兆しが出てきている。パソコンを使って教育や学習を効率化させて、学んで楽しいというテーマだけでも可能性はたくさんある」

 ――4月に開設した直販サイトでは、競合他社の製品も扱っている。狙いは。

 「先にも述べたように、顧客が何を求めているかだ。顧客が求めているのは、当社の製品だけとは限らない。だから、競合他社の製品であっても、顧客が求めるのであれば売る。メーカーが自社の製品を勧めるのは当然だが、実際に使っている人たちの評価のほうがユーザーにとっては信憑性が高い。目指しているのは、ウェブ2.0の考え方で、現在は実験段階だが、当社のウェブサイトで、使い方などユーザー情報を発信し、それらの情報を通じて販売につなげるという試みだ」

 ――自社の成長を評価すると。

 「1995年の創業当時にさかのぼると、今日の姿には満足できる。しかし、現在は、志の10%を達成した地点にいる、という感覚だ。今年度は、ソフトウェア販売で前年同期比1.5倍の12億円を目指している」

DATA FILE
■金額シェアでは、2位に9ポイント差

 AOSテクノロジーズは、システムメンテナンスソフト市場の販売金額シェアで今年5月に首位を獲得。シマンテックと順位が入れ替わり、現在も首位の座を維持している。図は、BCNランキングによる今年7月の同市場のシェアを表したもの。2位のシマンテック(14.8%)とは9ポイントの差をつけている。

 販売本数シェアでは、首位のソースネクスト(24.0%)に続き、AOSは2位(18.6%)。製品別シェアでは、ソースネクストの製品がトップで、AOSの製品は、主力製品の1つ「ファイナルデータ2006 特別復元版」が5位にランクインしている。

 同社は、「ファイナルパソコン引越し」シリーズ拡販のため、パソコン購入者向けに同製品と抹消ソフトをセットにした5000円強の格安パッケージや、同シリーズのライト版をバッファローの内蔵HDD製品にバンドルするなど、裾野拡大に力を入れている。

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