臨界点

ソニーマーケティング ITマーケティング部統括部長 中牟田 寿嗣

2006/07/24 18:45

週刊BCN 2006年07月24日vol.1147掲載

 2006年のパソコン販売動向については、前半の不調と、「ビスタ」待ちによる買い控えが懸念される年末商戦を予想して中牟田寿嗣・統括部長は「前年割れするだろう」とみる。しかし、「市場が前年割れしても、ソニーは前年並みを維持する」と自信を示す。モバイルPC「バイオ タイプU」やBDドライブ搭載機種、ボードPCと呼ぶ「同タイプL」など、特徴あるバイオらしいラインアップの拡充で「商材の幅を広げることができた」と強気な展望の裏づけを語る。 田沢理恵 取材/文 清水タケシ 写真

この半年で『バイオ』らしさに自信 優れたデザインはどこにも負けない

 ――BCNランキングによれば、今年1-6月のパソコン市場は、前年割れしている。

 「業界全体が、この4月くらいから非常に厳しい。おおむね前年比80%か、良くて90%という状況だろう。3月までは、前年比100%くらいだと思うが、全体のマスが下がってきているという感触はある。そういう意味では厳しい状況だ。しかし、当社については、4-6月は前年並みで、実は他社に比べると伸びている実感がある」

 ――市場が伸び悩んだ要因は何か。

 「2002年のワールドカップの時に、開催したその週から20%減となった経験から、今回も同じ傾向になると覚悟していた。しかし、今回は、大会開催の6月に前年割れになったのではなく、それ以前の4月から落ちた。薄型テレビの活況にシェアを奪われたのであれば、4月の薄型テレビの伸長率がさらに上がるはずで、つじつまが合わない。薄型テレビ人気もひとつの要因として考えられるが、私自身は、『ビスタ』待ちによる買い控えの影響だと思う。4月くらいから、ビスタの話題が出始め、パソコン購入検討者の3割がビスタの登場まで買い控えるという調査資料もあるようだ」

 ――今年後半も厳しくなりそうだが。

 「需要期として最大の山場となる年末商戦だが、今年は5年ぶりの新OS(ビスタ)の登場を目前にして、買い控えによる低調が予想される。年末は厳しいだろうが、そこだけ踏ん張ればいいだけ。年末に売れるか、年明けに売れるかの違いだ。毎月コンスタントに売れて欲しいが、消費者がまったく買わなくなるわけではない。逆に1月以降に盛り上がるのなら、それはそれでいいことではないか」

 ――年末商戦に向けた訴求ポイントは。

 「年末商戦についても、従来通り『ワイド&スリム』やボードPCの訴求に力を入れていく。15.4型ワイドモニタの『タイプL』は、競合他社のモニタ一体型のデスクトップとは一線を画していると自負している。デザインが良くて、持ち歩きも可能なことがポイントだ。そのほか、価格的にまだ普及期には入らないだろうが、ブルーレイディスク(BD)ドライブを搭載した機種も、できる限り広げていきたい。正直、ここ数年は新提案がしきれていなかった。この半年で久々に『バイオ』らしい提案ができ、ラインアップの充実が図れた。それが武器になる」

 ――パソコン市場拡大のカギは何か。

 「パソコンの歴史を遡ると、90年代後半は仕事の道具としての利用がメインだった。しかし、今は明らかに遊び用途での利用が増えている。デジカメの画像や、ビデオカメラで撮影した動画に簡単な編集を加えたり、テレビの視聴も可能な究極の汎用機だ。1人1台から複数台を使用する時代になって、生活のなかに浸透してきている。多様化する用途にどれだけ提案できるかだろう。リビング、アウトドアなどそれぞれのシーンに合わせた提案をしていく」

 ――『バイオ』の強みは。

 「何よりもデザインが強みとなる。デザインはナンバーワンでいたい。『バイオ』は、デザインが先に決まってその後にデバイスを入れることもあるほどだ。使いやすさのための機能美とデザインには絶対的な自信を持っている」

DATA FILE
■持ち運べるデスクトップが好調

 ソニーは、BCNランキングによるパソコン市場全体で、NEC、富士通、東芝に続く第4位(シェア14-15%前後)で推移している。

 図は、ソニーのデスクトップパソコンのうち、BCNランキングの上位にランクインしている「VAIO type L VGC-LB50B」のシェア推移を表したもの。

 同製品は、今年4月に発売したモニタ一体型のデスクトップパソコン。「競合他社のモニタ一体型は大画面化に向かっている」(中牟田寿嗣・統括部長)なかで、「持ち歩きができて、置いたときのデザインが良く、デスクトップでも持ち歩けることがポイント」としている。BCNランキングでもベスト5に入る人気製品だ。

 7月3-9日のデスクトップパソコン市場の機種別シェアで6位にランクインしており、平均実売価格14万4186円。同週のシェアは3.6%で、5月29日-6月4日の週と比較すると1.1ポイントアップしている。

  • 1