臨界点
日立マクセル ディスク製品事業グループ事業グループ長執行役 松浦武志
2006/07/10 18:45
週刊BCN 2006年07月10日vol.1145掲載
信頼性が強み 非価格競争力でユーザーを獲得
――DVDメディアの販売状況は。「販売数量は年明けから4月まで前年を上回り、順調に伸びた。伸び率が若干鈍化した月もあるが前年を上回って推移している」
――DVDメディアは、低価格製品が氾濫している。そのなかで日立マクセルが首位を保っている理由は。
「当社の製品は、ライセンスを受けて販売されているドライブ、レコーダーに対して100%互換性があり、何の障害もなく読み書きができると自負している。また、メディアは、保存したデータが消えずに残せるかどうかが重要だ。DVDメディアの主流となっているDVD-Rについては、DVD-RAMに比べると熱や光に弱いという化学的性質を持っている。そのため、当社は何十年何百年というレベルで耐用年数をシミュレーションし、品質保証を徹底している。価格の安さだけではなく品質で選ばれる、つまり“非価格競争力”があることをユーザーに認めてもらう施策を推し進めている」
――強みの信頼性をどう訴求していくか。
「少々品質が悪くても安いほうがいいと考える消費者を説得するのは難しい。しかし、商品を選ぶときに、『どれも同じ性能ならば安いほうがいい』と考えて低価格ブランドを選んでいる消費者には、当社製品の品質をきちんと理解していただきたい。大人になった自分ヘ子供がメッセージを残すというテレビCMを放送しているが、これは、当社の製品コンセプトをワンフレーズで訴求している端的な例だ。こういった訴求を引き続き行い、コンセプトを店頭でもしっかり伝えていきたい。さらに、公文書保存に適したメディアとして公的機関で認められるように、第三者機関での認定取得も推進していく方針だ」
――今後の次世代DVDメディアの展開は。
「今年7月から順次HD DVDとブルーレイディスクの次世代DVDメディアを発売する。しかし、今年はこれらが販売の主力になるとは思っていない。まだ準備、啓蒙の段階とみている。当社はディスクを供給する立場なので、ドライブの普及率が今後のビジネスの基本となる。08年に入ると、売上レベルでビジネスにつながっていく時期にさしかかるだろうと考えている」
――今年度のビジネスで注力するのは。
「CPRM(Content Protection for Recordable Media=著作権保護技術)対応のDVD-Rだ。市場には、現在CPRM対応のDVD-Rはまだ少ない。地デジ対応のDVDレコーダー市場が拡大しているため、地デジを録画できるDVD-Rを今後強化していく方針だ。また、12センチの現行のDVDメディア市場は、価格下落が進み市場全体の状況は必ずしも楽観視できない。一方で、8センチのムービー用メディアは、本格的にテープからディスクへシフトしてきているため、こちらについても力を入れていきたい」
――今後のDVDメディア市場の見通しは。
「来年が端境期とみている。数量は伸びるが、現行のDVDの価格が底にくるだろう。さらに、次世代DVDがまだ本格化しないため、来年は苦しいのではないか。生き残りをかけたビジネスが鮮明になり、淘汰が進むかもしれないとみている。当社は、商品力の強化によってブランドを浸透させ、次世代のビジネスにつないでいきたい」
DATA FILE
■品質重視でトップシェア維持
DVDメディア市場は、日立マクセルがシェア20%前後、2位がTDKで15%前後という勢力図で推移している。6月19-25日のBCNランキング週次データでは、日立マクセルが前週から4.5ポイント伸長した。
DVDメディアは現在、国内大手メーカーがシェアの上位を占めているが、前年同週には、ノーブランドのAV用4倍速DVD-R(平均実売価格10枚入り326円)が製品別シェアで首位、メーカー別シェアで2位だった。「極端に安い製品が市場に出てきて、あるときに品質問題を起こして減っていく。そして、しばらくするとまた市場に出てくる、その繰り返しだった」(松浦執行役)という。
DVDメディアは、「HDDに録りためた番組のうち、残したいものを選んで保存するという使い方が多い」ため、品質の信頼が求められる。日立マクセルは、信頼性を支える1つの要因として「国内生産の強み」を挙げている。
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