店頭流通
<BCN REPORT>W杯需要に沸く欧州 FIFAスポンサー東芝と市場動向(下)
2006/07/03 18:45
週刊BCN 2006年07月03日vol.1144掲載
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台頭する「バイイング・グループ」
薄型テレビの主力は32インチ

国際空港を抱えるドイツの玄関口、フランクフルト郊外にある大手家電量販店「メディアマルクト」は、ワールドカップ開幕直前にテレビコーナーを薄型テレビに一新した。このコーナーはこれまで、ブラウン管テレビが陳列されていたスペースだ。店内に並ぶ東芝製32インチの「REGZA」は、取材時(6月14日)に「1299ユーロ(約18万円)」で攻勢をかけている。欧州最大の家電メーカー、フィリップスの同型テレビは「1899ユーロ(約26万5000円)で販売されていた。
フランクフルトは韓国サムスンが欧州本社を構える土地柄。同店ではサムスンの薄型テレビが幅を利かすが、32-42インチの「REGZA」が揃っているため、「東芝製の売れ行きは好調」と、フロアー長は語っている。大会期間中は、ワールドカップ効果を見越し、各メーカーの価格競争が激化。やはり、顧客の目は、低価格の薄型テレビに注目が集まっているという。

このうちドイツの家電量販店は、日本と若干異なる特徴的な流通構造がある。東芝システム欧州社の西村弘志・副社長は「日本の家電量販店は、地域の各店舗が本部の指示に従う。しかし、ドイツでは各店舗の店長が、値段付けや仕切り値、品揃えなどの決定権をもつ」という。それだけに、家電メーカーは、本部との交渉を含め、各店舗を隈なく訪問し、交渉する必要があるのだ。
■バイイング・グループにも対応 東芝、市場の伸び上回る成果に
一方で、薄型テレビがテレビ市場の主流となり、欧州では、独立の電器店、いわゆる“パパママショップ”で組織する「バイイング・グループ」と呼ぶ流通網が、販売台数を伸ばすうえで欠かせない存在になっている。AV機器を大量に仕入れる大手家電量販店に対抗するため、電器店が寄り合い大量購入することで、家電メーカーとの直取引を有利に進める狙いがある。日本では、ヤマダ電機などが「フランチャイズ制」を敷き、電器店を取り込んでいるが、これとは形態が異なる。
2004-05年に松下電器産業が欧州市場でプラズマテレビの販売量を伸ばした背景には、このバイイング・グループに「魅力的な価格で提供したからだ」と、東芝情報システム英国社の安部嘉男社長は苦笑いする。これに対して東芝は、昨年5月から、同グループの流通網を生かした販売戦略に着手。この効果もあって、今年1-5月の東芝の薄型テレビは、市場の伸びと比べて5割増しの成果をあげた。
■動きの鈍いHDD&DVDレコーダー 文化の違いと操作性がネックに

「バイイング・グループ」が注目されるのは、こうしたセット販売に適したチャネルであることが大きい。「消費者に対して操作方法や接続の仕方、画質などの違いを説明する必要性が高まっている」(安部社長)ことから、各家庭を訪問しながら購入を促す電器店の存在感が高まっている理由はそこにある。
欧州で東芝は、「ノートパソコン市場を切り開いたパイオニア」「技術力の高い日本メーカー」として認知されている。今大会では、欧州限定ノート「FIFA Notebook 2006」を、2006年をもじり2006台限定発売した。すでに完売に近いという。イギリスでは、5月末までに東芝製ノートを調達済みで、仮にイングランドが優勝すれば、購入価格の50%をキャッシュバックするキャンペーンも実施した。
欧州内では、家庭で利用する通信環境はISDNが主体。ADSLや光通信が主流の日本に比べ格段に悪条件。「日本対オーストラリア戦」前の2日間は、日本への通信速度が「300K」まで落ち込んだという。通信環境が北米、アジア並みに整備されれば、AV機能を搭載した東芝のノート「Qosmio(コスミオ)」などの出番は増えるに違いない。
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