臨界点

日立製作所 ユビキタスプラットフォームグループ マーケティング事業部AV営業本部本部長 髙橋憲二

2006/06/26 18:45

週刊BCN 2006年06月26日vol.1143掲載

 日立製作所がプラズマテレビ夏商戦で目指すのは「シェア40%超」。髙橋憲二・AV営業本部本部長は、首位の松下電器産業に後れをとらないためにも「40%がボーダーラインだ」と断言する。「当たり前だが、まじめにいい製品をつくっていくこと」で信頼を得ることが最終的にユーザー拡大につながる。拡販策の一環として、50V型以上の大画面を含めたバリエーションの拡充や生産体制の強化などを図っていく。 田沢理恵 取材/文 清水タケシ 写真

“録画できるプラズマ”がヒット 夏商戦はシェア40%超を目指す

 ――「Wooo(ウー)」ブランドを立ち上げて4年が経った。

 「従来、日立のAV機器は、白物家電の陰に隠れていて、力がなかった。2000年にブランウン管テレビ、アナログVTRから撤退し、黒物家電(デジタル家電)をどう展開するのかと言われていた。コンシューマ向けのプラズマテレビは、01年3月に発売し、その翌年に『Wooo』と名づけた。プラズマ、液晶、DVDレコーダー、プロジェクタ、デジタルビデオカメラも同じく『Wooo』で統一し、長い目でこの新しいブランドを育てようと考えた」

 ――プラズマ「Wooo」の広告展開が積極的だが、ブランドの浸透率は上がっているのか。

 「CMの『録画もできないプラズマなんて』というフレーズが浸透して、HDD内蔵のプラズマの訴求がうまくいきすぎたようだ。HDD内蔵タイプを強みに売りやすい商材になったが、一方でHDD非内蔵タイプについては、消費者に十分な訴求ができていない。笑い話だが、バイヤーから『日立には録画のできないプラズマもあるのか』と言われるくらいだ」

 ――HDD内蔵タイプの販売台数はどのくらいを占めているのか。

 「当初は、6割がHDD内蔵、4割が非内蔵を見込んでいたが、実際にはHDD内蔵が80%を超えている。予想以上の勢いでHDD内蔵が売れているのだが、HDD非内蔵タイプを獲り逃がしていることは否めない。しかし、HDD搭載がいい差別化になって、認知度も上がっている」

 ――ワールドカップ商戦を含めて、夏商戦の立ち上がりは。

 「春夏商戦向けに、4月末から5月半ばにかけて37V型、42V型の新製品を投入した。ワールドカップ前のゴールデンウィークに一度ピークの波がくるだろうとみていたが、予想より伸び悩んだ。しかし、近年のスポーツイベントによる市場の盛り上がりは、イベントの直前になって強まる傾向にある。そのため、今年の夏商戦では、なんとかシェア40%超を実現したい。そして06年度では44%を目標としている。当社のAV機器でシェア40%とは、過去にも経験したことがない数字だが、首位の松下に後れをとらないようにするためのボーダーラインだと考えている」

 ――目標に掲げる40%を獲得するための具体策は。

 「競合メーカーは50V型以上のラインアップ強化を図っているが、当社は、ワールドカップ商戦に向けて50V型以上の新製品を出せなかったことが心残り。今後は、手薄になっている50V型以上を含めたラインアップの増強が欠かせない。そのほか、HDD内蔵、非内蔵以外の特徴として、例えばアンダースピーカー、サイドスピーカーなどのバリエーションを増やすことも必要だろう」

 ――今後の課題と目標は。

 「『Wooo』ブランドの認知度は上がっているが、まだ脆弱だ。ブランド認知の浸透は一朝一夕とはいかないため、長い目で取り組んでいきたい。また、原価力はまだ十分に出せている状況ではない。プラズマは、グループでの内製化率60%だが、原価力や製品の信頼性を高めるためにも、私自身は100%内製化が理想と考えている」

DATA FILE
■プラズマテレビで20%台を維持

 BCNランキングによるプラズマテレビ市場では、首位の松下電器産業と日立製作所のシェアの合計で90%前後を占めている。日立は、BCNランキングのプラズマテレビ市場において、シェア25-30%弱で推移している。今年3月にはシェア31.0%を記録し、首位の松下との差を縮めた。しかし、4月以降20%台にダウン。その後、4月末に新製品「Wooo9000」シリーズを投入し、5月以降の週次データでは25%以上のシェアを確保している。

 6月5-11日の製品別シェアをみると、日立はHDD内蔵37V型「W37P-HR9000」(平均実売価格27万4015円)が3位で最高順位。首位の松下「TH-37PX600 VIERA」(同25万6625円)との価格差は1万7000円程度だ。

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