店頭流通

業界に衝撃! ソースネクスト 1980円の会計ソフト

2006/06/12 18:45

週刊BCN 2006年06月12日vol.1141掲載

 ソースネクスト(松田憲幸社長)が5月19日、1980円の低価格でパソコン量販店の会計ソフトウェア市場に参入した。店頭向けに製品を提供する会計ソフトベンダーは、「ついにその時がきた」と嘆息する。今回の低価格ソフトの「開発元」が、店頭市場でシェア上位のマグレックス(井本賀津雄社長)であることも、業界の衝撃度を倍化させた。店頭の会計ソフトはここ数年、販売が減り続けている。業界上位の弥生などを除けば、価格競争で低価格化を招き、収益モデルとして成り立たなくなりつつある。そんな折の「1980円ソフト」攻勢。同社は「会計ソフト市場の活性化につながる」と言うが、競争力に乏しいベンダーにとっては、踏ん張りどころとなる。(谷畑良胤●取材/文)

年間5万本、シェア1位が目標
競合ベンダーへの影響は必至

■既存ソフトの機能限定版 初心者向けには十分?

 ソースネクストが1980円で発売した会計ソフト「会計上々START」は、マグレックスの業務ソフト「おたすけ!会計」の入力補助や法人決算書など、一部機能を除いた「会計ソフトの入門編」として製品化した。機能限定とはいえ、仕訳入力をするだけで、簡単に決算処理ができ、決算時には各種帳簿や貸借対照表などの決算書を自動で作成できるため、“会計ソフト初心者”が使うには十分の機能を備えている。

 ソースネクストは、パソコン量販店に加え、書店やGMS(総合スーパー)などにも販路を拡大する。目標販売本数は「パソコン量販店だけで年間5万本。BCNランキングの『業務ソフト分野』で年間シェア1位を獲得する」(会計ソフトを担当する永田聡美氏)と、高い目標を掲げる。

 マグレックスは、ソースネクストに製品提供するのを機に、自社ブランドに「会計上々(PRO版)」(2万4800円)を加えた。「会計上々START」を導入し、ある程度機能を熟知した顧客が、上位版に乗り換えることを狙う。マグレックスは「当社の既存製品とターゲット層が一致し、多少影響はある。しかし、5%の顧客が上位版へアップグレードすれば成功」(堀川貴政・営業部担当)としたうえで、「ソースネクストの販売力で、今まで開拓できていないパソコン量販店の実売と、認知度の向上が図れる」と期待する。

■制度改正にはパッチで対応 影響は少ないの声もあるが

 会計ソフトの場合、他の店頭向けソフトと違い、制度改正や税制改正などの際に瞬時に対応製品などを提供する必要がある。これについて、ソースネクストは「大きな改正は、マグレックスからパッチソフトが無料で提供される。場合によっては、バージョンアップも行っていく」(永田氏)という。サポートは、FAXと電子メールで無料で行う。電話による対応は有償で、マグレックス側で対処する。

 ソースネクストは2003年2月、コモディティ(日用品化)を宣言し、1980円のパソコンソフト「Qualityイチキュッパ」シリーズを460タイトル製品化した。「会計ソフトを出すことで、BCNランキングの対象となる分野すべてに製品を揃えた」(永田氏)と、自信を見せる。2年ほど前から、協業できる国産ソフトベンダーを探し続け、マグレックスにたどりついた。

 会計ソフトを出す弥生や業界2位のBSLシステム研究所(BSL)は「当然、販売本数への影響はある」と口を揃える。ただ、弥生は初心者より若干上の層を対象にしており、影響は軽微と見られる。一方、BSLは初心者層がターゲットで影響が懸念される。

 BSLの小野秀幸社長は「初心者向けに電話サポートがないと、購入したあと安心して使いこなせないはず。今は、影響が少ないと見ている」と、静観する構えで、1980円に対抗する低価格製品を出す計画もないという。

■上位版への移行は進むのか「認知度高まればそれでいい」

 2年前に今回と同様の衝撃をもたらした製品があった。日本デジタル研究所(JDL)の無償経理ソフト「JDLIBEX出納帳3」は、2年間で30万本が配布され、そのうち上位版に3割が乗り換えたといわれる。すべてをこの事例に当てはめるのは無理だが、1980円の会計ソフトに満足し、上位版への移行が進まないことも想定される。将来的にマグレックスの収益に悪影響を及ぼす危険性もある。これに対し、マグレックスは「気軽に会計ソフトを買い、当社ソフトの素晴らしさを知ってもらうことはメリット」(堀川・営業担当)と、認知度が高まる効果は大きいという。

 10人以下の中小・零細企業は国内に530万社以上が存在する。このうち、会計ソフトやExcelなどを使い会計処理する「自計化」企業は、3割にも満たないとされる。BCNランキングによると、5月22-28日の週は、業務ソフト分野で「会計上々START」が製品別シェアで4位に入った。会計ソフトだけを見れば、弥生の2製品に次ぐ第3位に位置する。会計ソフトの需要期ではないにもかかわらず、初速でこれだけ伸びたとなれば、さすがに競合他社への影響は必至だ。
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