臨界点

バッファロー 代表取締役社長 斉木邦明

2006/06/12 18:45

週刊BCN 2006年06月12日vol.1141掲載

 コンシューマ向けのメモリやストレージ、ネットワークなどで圧倒的なシェアを誇るバッファロー。次なるステップは“デジタルホーム”の確立だ。家電メーカーなどとのアライアンスを進め、ネットワークを切り口に家庭内のデジタル機器がつながる環境を創出していく。ビジネス領域の拡大で、近い将来に売上高5000億円規模を目指す。 佐相彰彦 取材/文 近内貴宏 写真

“デジタルホーム”の確立を目指す 領域の拡大で売上高5000億円規模へ

 ――メモリや無線LAN、外付けHDDなど、さまざまなコンシューマ向け周辺機器でトップシェアを獲得しているが、ビジネス拡大のポイントと捉えていることは何か。

 「メモリやストレージ、ネットワークなどの既存事業で徹底的に最大利益の追求を行っていくことに加え、最近では新しい市場の創出に力を注いでいる。今後は、“デジタルホーム”をキーワードに情報機器と家電機器の融合が進む。環境の激しい変化に対応するためには、事業領域を拡大することが重要になってくる。そのため、今年度早々に新しい市場への参入を視野に入れた組織『市場開発本部』を設置した。既存事業で確保した利益を新規事業に投資するサイクルを構築していく」

 ――デジタルホーム市場での強みは。

 「“撮る、貯める、視る”の製品ラインアップと無線LANを持っていることだ。これにより、家庭内を無線LAN環境とし、ビデオキャプチャの『ピーキャスト』で録画、ストレージ機器の『リンクステーション』と『テラステーション』で保存、ストレージ機器やパソコンなどに保存してある写真や音楽、映像を『リンクシアター』を通じてテレビで見る、といったことが可能となる。こうした環境の実現をユーザーにアピールしていく」

 ――新しいマーケットの確立に向けて課題はあるか。

 「家電メーカーやISPなどとのアライアンスだ。家電メーカーに対しては、デジタルホームの実現に向け、ボタンを押すだけで無線LANの接続設定と暗号化設定が可能な当社独自技術『A.O.S.S(エアステーション・ワンタッチ・セキュア・システム)』の採用で、テレビを中心に複数機器がつながるメリットがいかに大きいかを訴えている。現段階では具体的なアライアンスが決まっているわけではない。しかし、昨年度はゲーム機器メーカーがA.O.S.Sを採用した。そんなことから、近い将来、家電メーカーが採用すると確信している。ISPには、キャリアを中心にセットトップボックスを提供する」

 ――既存事業の強化策は。

 「法人向けビジネスをさらに拡大する。LAN接続HDDの保守サービスでNECフィールディングと協業したことにより、システム案件を中心に大きな引き合いがきている。法人向けビジネスの売上比率は、現段階で全体の40%だが、当面は50%まで引き上げることが目標だ」

 ――海外市場については。

 「ワールドワイドでは、パソコン周辺機器市場が日本の10倍にあたる4兆円規模になっている。この5%を獲得するだけでも2000億円の売上規模が見込める。海外市場は、今年度が売り上げ198億円(前年度比64.6%増)の見通しで、今後もさらに伸びていく。ブランド力の向上で成長させる」

 ――全体の売上計画は。

 「今年度は、売上高1380億円(前年度比19.1%増)を見込んでいる。パソコンだけでなく、薄型テレビを含めたデジタル製品の周辺機器メーカーとしてビジネスを展開していけば、さらに売上規模は拡大できる。既存事業や海外ビジネスを継続的に強化し、新しい市場への参入に向けて家電メーカーとのアライアンスなどをすすめれば、近い将来、売上高5000億円規模も夢ではない」

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■無線LANで60%超のシェア

 無線LANの店頭販売は、バッファローが圧倒的なシェアでトップを維持している。5月22-28日のメーカー別販売台数シェアで61.7%を獲得した。機種別シェアでは、上位10機種のうち9機種を同社の製品が占めている。ここ数年、同社が首位に君臨しており、無線LAN市場は当面、1強時代が続きそうだ。

 同社がデジタルホームをキーワードにビジネスを手がけているのは、ビジネス領域の拡大に加え、無線LANの拡販も狙いだ。斉木社長は、「(現在策定中の)無線LAN規格である『IEEE802.11n』対応の製品が市場に出回れば、ワイヤレスでも100Mbpsの速度が可能となり、インターネットを通じたオンデマンド配信がさらに活発化する。無線LANとオンデマンドサービスの充実が相乗効果を発揮するだろう」とみている。

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