大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>3.アップルが仕掛ける“本当の”Switch戦略

2006/06/12 18:44

週刊BCN 2006年06月12日vol.1141掲載

 アップルコンピュータが5月17日、Intel Core Duoプロセッサを搭載したMacBookを発売した。

 従来のiBookの後継製品であるとともに、PowerBookの12インチモデルの後継機種とも位置づけられる同製品では、最上位モデルにのみ、久しぶりのブラックカラーを採用。色づかいひとつにもこだわりを見せている。

 今回の製品によって、ポータブルラインは、すべてがインテルチップ搭載製品となった。デスクトップでも、モニタ一体型のiMac、小型PCのMac miniが、すでにインテルチップ搭載へと移行。残るはPowerMacとX Serverという状況だ。

 インテルチップへの移行は、マックの性能を飛躍的に向上させている。MacBookを例にとれば、従来のiBookに比べて、最大5倍という圧倒的な性能向上を実現。PowerBookの12インチモデルと比較しても4倍以上のパフォーマンスを達成している。さらに、Core Duoによる低消費電力化によって、筐体の薄型化も実現した。マックが、インテルチップによって大きな進化を遂げたのは、マックユーザーでなくても気になるところである。

 アップルはここ数年、「Switch」というメッセージを投げかけてきた。これは、いうまでもなくウィンドウズからマックへのスイッチである。だが、この発言の意図は少しずつ変化してきている。当初のメッセージは、完全移行を前提としたものであり、マーケティング手法にはかなりの無理があったといえる。だが、ここきて同社が打ち出すスイッチの意味は、「ウィンドウズとの共存」へと変化している。それとともに、施策も的を射たものへと変化している。

 その第1歩ともいえるのが、USBによる周辺機器の共通利用。マウス、プリンタ、ドライブなどがウィンドウズPCで利用しているものと同じものがマックで利用できることは周知の通りだ。

 第2段階は、iPod戦略だ。当初は、マックの利用だけにとどまっていたiPodだが、iTunesでウィンドウズに対応。これにより、ウィンドウズユーザーを取り込むことに成功した。言い換えれば、ウィンドウズユーザーに対して、垣根を感じさせることなく、マックの世界を体験させることに成功したともいえる。

 そして、第3弾がインテルチップの搭載である。性能面でも遜色なく、将来にわたってのロードマップも提示されることで、ユーザーは安心してマックを利用できるようになる。また、プラットフォームでの互換性といった点でもプラス要素があるのは明らかだ。 それをさらに一歩進めたのが、4つめの施策となるBootCampである。これにより、ウィンドウズ用に開発されたアプリケーションは、そのままMac上で動作するようになる。しかも、これをアップル自身が提供してみせた。現在は、パブリックβ版としての提供にとどまっているが、次期MacOS X(開発コードネーム・レオパード)では、これが正式に搭載される。

 気がついてみると、アップルは、ウィンドウズ環境のほぼすべてをマック上に用意した。あとは、ウィンドウズユーザーを、いかにマックに移行させるかであり、それらの施策が、これから加速することになる。いよいよ本当のSwitch戦略が始まる。
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