大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>2.サポート品質の充実がリピーターをつかむ

2006/06/05 16:51

週刊BCN 2006年06月05日vol.1140掲載

 個人向けPC事業における、サポート事業の重要度はますます高まっている。

 内閣府の調査によると現在、PC出荷全体の約75%が買い換え/買い増しによるものだ。つまり、次も自社製品を購入してもらうために、いかに販売後のサポートを手厚くするかが各社共通の認識で、それがメーカーシェアを左右することになるからだ。

 国内トップシェアを誇るNECを例にとるとそれがわかる。NECは、2年前までは新製品を発表するごとにシェアが大きく揺れていたが、2005年は、年間を通じて安定したシェアを獲得している。この背景には、バリューチェーンの革新や、市場ニーズに合致した製品企画/開発体制の進化、販売店への即納体制の確立といった、体質改善やインフラ整備が見逃せない。同時に、サポートに対するユーザー評価の向上を抜きに語ることはできない。

 NECパーソナルプロダクツの安達俊行執行役員は、「00年時点では、次もNECを購入したいとするユーザーはわずか3%だったが、最新の調査ではそれが59%にまで拡大している。多くのユーザーに当社のサポート品質の高さが評価され、購入につながっているのでは」と語る。

 5月23日から、PCおよび周辺機器の相談窓口である121コンタクトセンターの技術スタッフを相談内容ごとに専任化。多様化、高度化する質問内容に、短時間に的確に対応できる体制を整えた。また、トラブルの予防保全に踏み出す「121ポップリンク」機能の強化や、ユーザー自らがウェブを通じてトラブル診断が行える「121故障診断サービス」を用意し、故障を未然に防いだり、迅速な解決を支援する体制を敷いた。

 富士通もそれは変わらない。同社では、24時間の電話サポート体制をいち早く実現。さらに、メールによる問い合わせに対しても平均14時間以内での回答を達成している。3月からは、顧客が自らウェブ診断できるWEB修理相談を、NECに先駆けてスタートしており、サポートへの投資にはやはり積極的だ。

 そして、国内シェア3位までのぼりつめてきたデルも、その原動力となったのは、低価格戦略とサポート品質の高さだ。ただここ2年間は、出荷量の拡大にサポート体制の強化が追いつかず、バランスを欠いた体制となっていた。それは同社幹部も認めるところであり、昨年後半から、急速な勢いで体制強化に乗り出している。

 昨年11月にオープンした九州・宮崎のカスタマーセンターでは、現在250人の体制を今年末には500人体制に増強する。これは1年前倒しでの増員計画だ。最終的には、同センターだけで1000人体制とし、川崎、中国・大連のカスタマーセンターとあわせて、万全のサポート体制を確立する。

 各社にとって、サポートはまさに重要な課題。これまでは設計/開発部門の影響力が強いメーカーほど、サポート部門の活動を軽く見る風潮にあったが、もはやそうしたメーカーは生き残れないといっていい。サポートはコストばかりがかかるという意識が社内に少しでも残っていたら、それはマイナス要素にしかならないだろう。買い換え/買い増しが中心となっている現状を踏まえれば、サポートへの投資は、攻めの投資である、とみるべきだ。
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