臨界点
三菱電機 モニター事業センター長 御厨長十
2006/04/24 18:45
週刊BCN 2006年04月24日vol.1135掲載
20インチ超の大型ディスプレイを投入 高品質の追求でユーザーをリードしていく
――昨年度(06年3月期)の販売状況は。「年末商戦は前年より盛り上がりに欠けたものの、計画通りの実績を上げた。顧客の目がデジタルAV(音響・映像)機器に向き、パソコンやモニタがそれに食われたイメージだ。業界全体の仕掛け次第では、もっと伸びたはず」
――仕掛けが不十分だったと。
「顧客は潜在的に、エンターテインメント志向の機器を求めている。業界全体として、その機能の盛り込み方が弱かった」
――そうした潜在需要を液晶ディスプレイでどう掘り起こすのか。
「当社では過去2年ほど、コンテンツの再現性を重視してきた。応答速度のアップを徹底して追求した。加えて、ディスプレイのワイド画面化が重要と考えた。今後は、大型にシフトしていく」
――すでに20インチ超のディスプレイは市場にある。これ以上大型の需要はあるのか。
「必ずしも顧客ニーズが先ではなく、業界全体がシーズを引き出すことをスタートに、エンターテインメント性を追求していく。大型ディスプレイをユーザーに実際に見てもらい、購買意欲を掻き立てる」
――今年度は、どのような製品展開を検討しているか。
「まずは、市場全体をディスプレイの大型化にシフトさせたい。よりエンターテインメント性のある商品を提供できるかがポイント。ただ、その前段階の春商戦では、従来から開発に力を入れてきた高速・高画質のクオリティをもう1段進めた商品を出す予定だ」
――その新商品とは。
「限りなく究極に近い商品になる。応答速度『グレーtoグレー』は2msで、コントラスト比が1000対1の商品を春モデルとして5月中に出す計画だ」
――ワイド画面は、現在の20.1インチを超えるのか。
「特定のヒット商品に頼るのではなく、『面』で勝負するため、各サイズのモニタを過不足なく提供する姿勢に変更はない。だが、エンターテインメント的な利用のみならず、業務的な利用では1人が2台のディスプレイを使う環境がある。これを1台で実現しようとするニーズがあり、最低でも23-24インチ以上のサイズが必要になる」
――主力商品である17インチ、19インチはどう進化するのか。
「顧客は、より買い求めやすく、使い勝手がよく、家庭でも気楽に利用できることを求めている。中を開けるとスペックはトップクラスの性能をもっていて、とても使いやすく、デザインも身近に置いて違和感のない、より洗練された商品になる」
――今年度、特に需要を掘り起こしそうな商品は。
「いくつかの局面がある。1つは、今年後半に出す予定の20インチ超のコモディティ(日用品)化したワイド画面商品。市場がこれにどう反応するか。また、その反応を見据え、買いやすいワイド画面の商品群を出せるかによって、新規需要を掘り起こせる。マイクロソフトの新OS『Vista』が延期になったことは残念だ。しかし、ユーザーは『Vista』の登場を念頭に置き、それに対応したモニタを購入するだろう」
――今年度のモニタ市場規模は。
「パソコンのバンドル品を除きモニタ単体市場では、350-400万台と予測している。この単体市場のうち、昨年度を超えるシェア25%を取る」
DATA FILE
■昨年を超すシェア獲得
昨年1年間は、三菱電機の液晶ディスプレイ(LCD)での販売台数シェアが22.5%に達し、トップを獲得した。今年に入ってからは、そのシェアをさらに上回る25%程度で推移。2位につけるアイ・オー・データ機器(IOデータ)を10ポイント近く引き離している。
三菱電機の売れ筋は、17インチの「RDT1712」シリーズ。4月3-9日の週では、機種別シェアで上位10製品に同シリーズ3機種がランクイン。中間階調4msの高速応答で、「ブレやボケのない動画」を実現できるのが売りだ。
LCD市場は、三菱電機とIOデータを除けば、乱戦模様。昨年3位を獲得したイーヤマ販売が5位以下に低迷し、代わりにソニーが3位に急浮上してきた。LCD市場の売れ筋インチサイズは、17インチが主流。20インチ超のLCDは、まだシェアを押し上げる存在にはなっていない。
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