臨界点

ロジクール 青柳 マテウ社長

2006/04/03 18:45

週刊BCN 2006年04月03日vol.1132掲載

 ロジクールでは、PCカメラをベースに新しいマーケットでの事業拡大に力を入れている。青柳マテウ社長は、「パソコンのコミュニケーションやエンタテインメント用途を追求していくことがカギ」とし、ヘッドセットやPCスピーカーなどとの組み合わせでPCカメラの拡販を図る。中核製品のマウスに関してもトップシェア獲得に揺るぎない自信をみせている。 佐相彰彦/文 馬場磨貴/写真

 ――国内外を含めたPCカメラの販売状況は。

 「05年度(06年3月期)第3四半期の売り上げは前年同期比44%増と好調に推移している。数年前まで、PCカメラは一部のパソコンユーザーだけが購入する製品だった。これは、パソコンをワープロや表計算の用途で使うユーザーが多かったためだ。しかし、今はパソコンがコミュニケーションやエンタテインメントの用途で使われるようになってきた。とくに日本はブロードバンド環境が進んでいるため、映像や画像を使ったコミュニケーションのニーズが高まっている。PCカメラで、新しいビジネスを手がけられるようになった」


 ――具体的には。

 「P2P技術を応用した音声通話ソフト『スカイプ』の登場で、ヘッドセットが売れ始めている。第3四半期の売り上げは90%増となった。また、デジタルミュージックの普及で、スピーカーの売り上げが第3四半期で144%増と爆発的に伸びた。こうした新しい分野にフォーカスしたことで、全体の売り上げは、第3四半期で19%増となった。今後は、PCカメラを中心にヘッドセットやスピーカーを組み合わせることで、ビジネスの柱の1つとして確立させる」

 ――新規事業の拡大策は。

 「ベンダーとのアライアンス強化が重要となる。ワールドワイドでは、マイクロソフトやスカイプテクノロジーズ、ヤフーなどとアライアンスを組んでいる。パソコンを通じて、ユーザーが相手の顔を見ながら通話やチャットなどを気軽に行える環境作りがビジネス拡大のカギになる。また、デジタルミュージック分野ではアップルコンピュータの『iPod』など需要が多い製品に関連した製品開発も模索している」

 ――中核製品であるマウスは、どのように拡販していくのか。

 「今後は、センサーとコードレスがポイントになる。今年3月には、新開発の『デュアルレーザートラッキングテクノロジー』搭載のコードレスマウス『V-400』を発売した。この製品は、光学式センサーやレーザーセンサーとは異なり、2つのレーザーが同時に照射している。そのため、光沢やペイント、木目などでも正確に読み取れる。コードレスの技術では、2.4GHz帯のデジタル無線の採用で動作可能距離が半径10メートルと広いことが強みだ。こうした新技術を他社に先駆けて製品化することで拡販していく」

 ――国内マウス市場は競争が激しいが、そのなかでシェアを拡大するためのポイントは。

 「確かに、参入メーカーが多いことに加え、家電量販店やパソコン専門店に並んでいる製品数も膨大だ。しかし、一方でマウスの市場規模は、買い替え需要を中心に非常に拡大している。最近では、パソコンの利用時間が2-3年前と比べて大幅に増えている。そのため、これまではパソコン付随の純正マウスで十分と感じていたユーザーが、疲労を防止するために自分に適したマウスを購入する傾向が高まっている。

 加えて、モバイルノートパソコンを購入するユーザーの増加で、マウス需要が増大しているのも事実だ。マウス事業は、今後も中核であることに変わりがない。シェアを高めるため、ワールドワイドでユーザーのさまざまなニーズに対応していることを強みに、日本に適した製品を市場に投入していく」

DATA FILE
■35%以上のシェアを維持

 PCカメラの店頭販売は、ロジクールがメーカー別販売台数シェアで35%以上を獲得してトップに君臨している。

 トップ確保に寄与している製品は、「Qcam Fusion」シリーズ「QVX-13HS」や「Qcam Instant Messenger」シリーズ「QV-61HS」など。3月13-19日の機種別台数シェアで「QVX-13HS」が6.5%で3位、「QV-61HS」が4.9%で4位に入った。しかし、機種別シェアではバッファローの「CMOS35万画素WEBカメラヘッドセット付モデル」シリーズが売れ筋製品となっている。3月13-19日は、「BWC-35H01/SV」が7.6%でトップ、「BWC-35H01/BK」が6.9%で2位となった。最近では、インターネットを通じて無料通話を楽しむ「スカイプ」の登場でPCカメラ需要が増えている。そのため、メーカー間のシェア争いは一段と激しくなりそうだ。

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