臨界点

エレコム 代表取締役社長 葉田順治

2006/03/13 18:45

週刊BCN 2006年03月13日vol.1129掲載

 プラス成長が続くパソコン業界のなかでも対前年比130%の380億円(単体)という業績予測で注目を集めるのがサプライメーカーのエレコムだ。昨年12月には対前年60%増を記録するなど、2004年末のロジテック買収による周辺機器強化策が効果を現してきた。上昇傾向にあるとはいえ市場の明日が見えない状況のなかで、エレコムはどのような戦略で臨むのか。 倉増裕/文 掛川雅也/写真

女性を意識した商品や売り場を実現すれば、市場はまだまだ伸びる余地がある

 ──最近の業績が好調だが。

 「ロジテックの買収による効果が出始めているので売上増は当然。しかし当社にとって、この先パソコン関連産業がいかに活性化していくかが重要な課題だ。これに向けての当社の方向性が、売り上げの増加につながっているのであればうれしい。しかし、結果としての売り上げの数字に一喜一憂する必要はない。私自身、そのレベルは卒業したと思っている」


 ──葉田社長が見据える方向性とは。

 「女性を意識した商品や売り場の実現に尽きる。この20年間にわたりパソコンは劇的に進化したといわれるが、本当に進化したといえるのか。進化したのはCPUやOSだけで、これを取り込んだパソコン関連商品や、これをビジネス化するパソコン業界にはほとんど進化はないのではないか。その証拠に、さまざまな分野で大きなターゲットとされる若い女性層が、魅力を感じる商品や売り場が未だに皆無であることを不思議と感じる人すら少ない。まず業界あげて女性マーケットを開拓せよといいたい。市場の成熟云々などそれからの話だ」

 ──具体的には。

 「若い女性の感性に合う商品を開発することはもちろん、売る側も徹底してこれを意識した店舗展開を行うことだ。当社が実施したFrancfrancとのコラボレーションなどもその一環で、家電量販店やカメラ店に縁のないパソコンユーザーがいかに多いかを実感する。ファッションやインテリアの世界では、F1と呼ばれる20代から30代半ばの女性に支持される店舗が大きなムーブメントを生み出している。従来の家電やカメラ的発想ではない、徹底して若い女性をターゲットにした商品戦略、販売戦略が、既存概念にとらわれたパソコン業界を一新する可能性を秘めていると思う」

 ──ロジテック買収の成果は。

 「音声や画像などパソコンが関わる情報の広がりとともに、音楽プレーヤーやデジカメはじめ周辺機器分野はどんどん拡大する。周辺機器の品揃えに加えて、これら周辺機器の接続性や相性についての最新技術を社内で確保するためにも、ロジテックとの協力体制が効果を発揮する。一見頭打ちの周辺機器市場だが、本当の市場拡大はこれからが本番。ロジテックの開発力をさらに強化するためのさまざまな施策が間もなく陽の目を見るだろう」

 ──エレコム商品の特徴を。

 「デザイン力を含む品質重視。エレコムのアピールポイントであるデザインについてはすでに消費者に浸透、公的にも中小企業庁長官賞を受賞するなど評価は定着した。最近はデザインを見るとエレコム商品であることがわかるとの意見もいただくようになり、専任スタッフによるオリジナルデザイン開発という地道な努力がようやく実を結んできた」

 ──今年の重点施策は。

 「社内的には開発体制の抜本的改革を行う。デザイン開発についても新たな若い能力をどんどん採用し、絶えずフレッシュなデザインを追求する。市場戦略としては若い女性層をターゲットにした商品開発、販路開拓をさらに進める。商品戦略では全商品にわたって徹底した差別化を行う。海外については今年も積極的に進出するが、墓穴を掘ることのないよう慎重なほふく前進を心掛ける」

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■女性ユーザー拡大を狙う

 エレコムは、マウス、スピーカー、ゲームコントローラ、USB、キーボード、10キーボード、計6部門で「BCN AWARD 2006」の最優秀賞を受賞。マウス部門、USB部門については6年連続で受賞している。

 マウス市場の機種別シェアは、実売価格1000円以下の製品が首位に立つ頻度が高く、トップを獲得する製品の入れ替わりが激しい。

 この競争の激しい市場で、エレコム製マウスは洗練されたデザインで、独特の存在感を放っている。2月のマウスメーカーシェアでは、エレコムが26.6%で首位、2位のサンワサプライに9.5ポイントの差をつけている。さらに女性ユーザー拡大に力を入れており、「Francfranc(フランフラン)」とダブルネームブランドのUSB接続光学式マウスなどを2月から順次販売を開始。新たなチャネルを通じてブランド認知の向上を狙う。

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