秋葉原は今

<秋葉原は今>14.家族連れ客をいかに取り込むか

2006/02/27 16:51

週刊BCN 2006年02月27日vol.1127掲載

 JR秋葉原駅前の超高層ビル「秋葉原UDX」が2006年3月9日にオープンする。  街にファミリー層が増えることを電気街の家電量販店やパソコン専門店が歓迎しているのは、新規顧客が増えるからにほかならない。

 「秋葉原ダイビル」が昨年3月にオープンして以来、首都圏新都市鉄道による「つくばエクスプレス(TX)」の開通などで街は様変わりした。また、ヨドバシカメラの「マルチメディアAkiba」は街に家族連れの来訪を増やす原動力になったといえる。

 とはいうものの、電気街のショップが家族連れをメイン顧客として獲得しているケースは少ないのが実情だ。電気街は、多くの家電量販店やパソコン専門店が建ち並んでいる点で、来訪者にとって複数の店で最適な製品を購入できるメリットはあるが、幼児を連れた客にとって、飲食店や休憩施設などがないのはつらい。喫茶店やレストランなどが充実していれば、高齢者や家族連れが来訪する傾向は高まる。こうした顧客層が家電を購入するために秋葉原で適している場所は現段階でヨドバシカメラ。そのため、まずはヨドバシカメラに客の足が向くのも頷ける。

 電気街では、街の変貌とともにマニアでない“一般ユーザー”が購入するような商品を充実させたり、家族が楽しめる店作りの徹底など、新規顧客を獲得しようと躍起になっているショップが増えている。なかでも、組み立てパソコン用パーツ専門店がパソコン本体の販売に力を入れる動きが激しい。サードウェーブは、「今後は家族連れが訪れることは確実。パーツに固執しているだけでは販売機会を逃すことになる」(甲斐元浩・ドスパラ事業部MD課マーチャンダイザー)と確信。薄型テレビを本格的に販売することを決断した。

 一方、「既存顧客のパーツユーザーを確保するには、特定層に特化した商品を充実させたほうが、来店者に店のコンセプトが伝わりやすいのではないか」(ツートップ秋葉原本店の金子潤一店長)という声もある。ツートップ秋葉原本店は、パソコン本体の販売に力を入れるべきかどうかに頭を悩ませているようだ。

 36店舗の飲食店を有するビルが電気街口に構えるようになるのは、電気街への来訪者増の可能性を秘めていることになる。秋葉原UDXのオープンは、新しい商品に力を入れていくべきか、逆に既存ユーザーを確実に確保して囲い込むべきかなど、電気街のショップが店のコンセプトを改めて決めるための道しるべにもなるといえる。(佐相彰彦)
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