臨界点

エー・アイ・ソフト 代表取締役 田村守康

2006/02/20 18:45

週刊BCN 2006年02月20日vol.1126掲載

 製販一体体制でこれまで成長を続けてきたエー・アイ・ソフト(AIソフト)が昨年4月1日、開発部隊を親会社のセイコーエプソンに移し、販売専門会社として新たなスタートを切った。これまで以上にエプソンとの連携を強めていく方針を掲げる。昨年11月にトップに立った田村守康代表取締役は、新生AIソフトの目指すべき道をどう描いているのか。 木村剛士/文 ミワタダシ/写真

販売専門会社として再スタート 法人向けチャネルの構築を強化ポイントに

 ――2005年4月1日付けで組織を変更。製品の企画・開発部隊を親会社のセイコーエプソンに移した。

 「これまでのAIソフトは、コンシューマ向けソフトを中心に、企画・開発から販売、サポートまでを一貫して手がけるソフトメーカーだった。だが、組織再編後は販売に特化した企業へと生まれ変わった。開発はエプソンに任せ、販売だけに集中した事業展開をすることになる」


 ――開発を移管した狙いは。

 「当社の狙いというよりも、エプソングループとしての狙いという意味合いが強い。エプソングループが持つハードや業務関連ソフトの開発部隊と、AIソフトの開発能力を合わせ競争力のあるソフト作りを推進するためだ。ハードに合わせたソフト作りは必須だ。開発面でこれまでエプソンとの連携がなかったわけではないが、多少希薄な面があった」

 ――開発コンセプトは変わるのか。

 「AIソフトが開発・販売しているソフトの機能が、がらりと変わることはない。ただ、エプソングループにとって、重要なソフトは何かをこれまで以上に考え、エプソンのハードを生かせるソフト作りというテーマを重視している。エプソン製ハードとシームレスな連携が取れているソフトが増えることになる」

 ――エプソングループのなかでのAIソフトの位置付けは。

 「当面は、強みとしているコンシューマ向けソフトの販売事業を中心に推進していく企業だ。これまで以上にディストリビュータや家電量販店への営業を強化する。しかし、今後はそれだけではない。当社が販売してきたソフトのなかに、コンシューマだけでなくビジネスユースにも使えるものがある。また、エプソングループのなかにも業務ソフトなど法人向けソフトが揃っている。コンシューマ向けソフトの販売を伸ばしながら、法人顧客獲得のためのチャネルを構築することが、3-5年という中長期的な戦略だ」

 ――今月24日にAIソフトとエプソンのダブルブランド製品を販売する。法人での利用を見越した製品のように感じる。

 「その通りだ。エプソンのファイル管理・検索ソフトと、AIソフトのOCRを組み合わせたソフトで、価格も2万円以上の高額商品だ。コンシューマよりもビジネスユースのほうが適しているだろう。法人へのアプローチを強めるために、販売元はエプソン販売とした。この新製品を武器に、法人系販売チャネルの開拓を図っていく」

 ――AIソフトの商品を購入してきたユーザーの間に、エプソンとのダブルブランドになったことで混乱が起きる恐れはないのか。

 「AIソフトのブランドイメージが確立しているだけに、いきなりエプソンのロゴが入ることで、ユーザーに混乱を与えてしまう可能性は考えられる。しかし、販売店などの協力を得ながら、ユーザーに不安を与えないように努力していく」

 ――コンシューマ向けソフト市場をどうみている。

 「大変厳しい環境にあることは間違いない。ソフトウェアの価値そのものが下がり続けている。現段階では、コンシューマ向けソフトで成長性があるジャンルは非常に少ない。ユーザーは何を求めているのかを考えながら、未開拓の領域に踏み込んでいくしかない。そうした意味でも、エプソンの総合力を生かして新しい分野を開拓したい」

DATA FILE
■ダブルブランドで高額商品の販売が加速

 画像処理や名刺管理、ユーティリティソフトなど多種多様なソフトを揃えるエー・アイ・ソフト(AIソフト)。2月24日に文書管理ソフト分野で新たな施策を打つ。

 親会社であるセイコーエプソンのファイル管理・検索ソフト「Document Storage」と、AIソフトのOCRソフト「読んde!!ココVer.12」を組み合わせたセット製品を、AIソフトとエプソンのダブルブランドとして発売する。

 図では、BCNランキングをもとに、直近の週(1月30-2月5日)の文書管理ソフト部門の販売金額シェアをあらわした。AIソフトは金額シェア10.1%で3位に位置している。だが、本数シェアと比べると金額シェアは約2ポイント増えており、高額商品が売れていることが窺える。エプソンとのセット商品も2万2800円と同分野では異例の高価格。今後の展開次第では、金額ベースでシェアが一気に上がる可能性を秘めている。

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