臨界点
ソニーマーケティング モバイルネットワークプロダクツマーケティング部統括部長 畑井尚也
2006/02/06 18:45
週刊BCN 2006年02月06日vol.1124掲載
ビデオカメラ、今年は他社に先駆けフルハイビジョンで勝負
――コンシューマ市場初のハイビジョンDVCは、大きなインパクトを与えた。「標準画質タイプの実勢価格に比べて5万円以上割高な製品だけに、どこまで受け入れられるかは手探りだった。しかし、『HDR-HC1』は想定以上の大成功になった。昨年7月以来の販売台数は、当初目標の1.5倍を上回り、累計で6万台を超えた。大きな手応えを感じている」
――まだほとんどの家庭にハイビジョンテレビは普及していない。なぜこの段階で製品化したのか。
「現在ハイビジョンテレビの普及率は約30%。確かに70%の世帯では、ハイビジョンで録画してもその画質をテレビで見ることはできない。しかし、今ハイビジョンテレビがなくても、赤ちゃんの産毛や運動会で走る子供の汗の雫までハイビジョンで残しておけば、将来的には美しい画像で大切な思い出を再生できる。だから、今、大切な思い出をハイビジョンで残そうという提案をした。店頭には、デモ機を設置してハイビジョン画質と標準画質の違いをアピールした。結果的にハイビジョンの良さを6万人以上が認めてくれた。顧客は良いものには高い対価を払ってくれるということがわかった」
――ハイビジョンの流れでDVC市場はどう変わると。
「販売金額は単価の下落もあり、前年比で微減となった。この市場は、年間140万台程度で安定している。少子化問題やデジタルカメラの動画撮影との競合で、台数の増加は難しい。しかし、単価の低下による市場の縮小を食い止めるためにも、高付加価値製品で市場全体の販売金額を伸ばすことが重要だと考えている。DVC市場をけん引するソニーの使命として、付加価値のある製品で、ユーザーに新しい提案を続けていきたい」
――ハイビジョン以外の提案とは。
「HDD搭載モデル『DCR-SR100』を3月に発売する。DVCの記録メディアで、テープが完全になくなることはないが、DVD、HDD、メモリカードが増えて新しいメディアへの世代交代が加速していく。さらに今年は、製品単体だけでなく、他のデジタル機器と連携したトータルな使い方の提案も強化したい。春商戦以降、本格的に新たな展開を準備している」
――トータル的な使い方の提案とは。
「今年はオリンピックなど大きなイベントに恵まれた勝負の年。各種デジタル家電のハイビジョン化が進むだろう。ソニーは、デジタルHDビデオカメラレコーダー『HDR-HC1』、薄型テレビ『ブラビア』、DVDレコーダー『スゴ録』、パソコン『バイオ』を含めて、録る、観る、編集するなどトータルでの〝ハイビジョンクォリティ〟を提案する。このトータルな提案ができるのはソニーだけだ。ハイビジョンの普及を追い風に春、秋の商戦期に向けて、今度は『HDR-HC1』に代わるフルハイビジョンの製品を発売する」
――競合他社からも今年はハイビジョン対応製品が出てきそうだが。
「当然、そうだろう。しかし、ソニーは、『HDR-HC1』でいち早く新しい提案ができた。他社が追随したとしても、さらに次の新しい提案で先駆ける。他社が追いつく前にいち早く次の製品を出していく」
DATA FILE
■ハイビジョンで新しい需要を喚起
デジタルビデオカメラの2005年1-12月累計のメーカー別販売台数シェアは、ソニーが38.6%を獲得。2位は松下電器産業の21.1%、3 位がキヤノンとなっており、ソニーが圧倒的なシェアでトップを維持している。
ソニーは販売金額でも45.0%を占め、台数、金額ともに同市場のけん引役といえる。
市場全体は頭打ち傾向だが、昨年ソニーが販売開始したフルハイビジョンのハンディカム「HDR-HC1」は、新しい需要を喚起した。
BCNランキングによる標準画質モデルの平均実売価格は7万円前後。「HDR-HC1」は、13-15万円で標準画質モデルの約2倍の価格だ。月次データによる機種別販売台数シェアでは、昨年8-10月に6位で推移。11月は4位に上昇し、12月は3位にランクインした。
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