臨界点
ワコム 山田正彦社長
2006/01/23 18:45
週刊BCN 2006年01月23日vol.1122掲載
需要増大のペンタブレット普及を促す新ステージへ
――国内ペンタブレット市場の現状は。「05年前半は、夏頃までデジタル家電や季節商品に需要が集中したために、パソコンおよび関連機器市場全体が厳しい状況だった。この影響で、ペンタブレットの購入意欲が弱かったなど、若干の影響を受けたのは事実だ。しかし、10月以降はプラスに動いている」
――05年10-12月の販売台数実績は。
「国内は、前年同期比10%増という結果になった。冬商戦向け製品として昨年9月末からラインアップの刷新を図ったことが功を奏し、コンシューマ市場が堅調に伸びた。ワールドワイドは、コンシューマと法人を合わせ前年同期比40%増となった。コンシューマが50%増、クリエータなどプロフェッショナルを中心とした法人が30%増という内訳だ」
――好調だった理由は。
「デジタルカメラで撮影した画像を編集するというニーズが一段と高まってきていることが1つの要因だ。05年後半からは、これまでとは異なった風が吹いている」
――どのようなユーザーが出てきているのか。
「製品によって異なる。コミックスやまんが、イラストの作成ソフトをバンドルした『ファーボ・コミックパック』は、漫画家を目指す10歳代の女性を中心に売れている。デジタルペンを活用しながらプレゼンテーションや商談ができる『ビズタブレット』はビジネスマンを中心に購入者が増えている。この製品は、価格4000円とリーズナブルに設定したことで、マウスと同程度の感覚で購入できるようになった。ほかにも、『ファーボ』の標準モデルもデジタルカメラの普及にともなって需要が増えている。1つの分野に絞った製品と全体を網羅した製品の両方向で顧客層を広げていく。ペンタブレットがパソコン上級者など高度な編集を好むユーザーだけが購入するのではなく、一般的に浸透する絶好の機運が到来したといえる。今後は、新しいステージに立つことになる」
――顧客の裾野を広げる策は。
「ユーザーが活用するケースは、現段階でイラスト用、画像編集用、筆記用具の代わり、CG(コンピュータグラフィック)用、といった4種類に分かれる。コンシューマ市場で画像の編集が簡単に楽しく行えることをアピールし、法人市場でビジネスシーンでの業務効率化などを促していけば、まだまだユーザーの裾野が広がると確信している」
――国内では、タブレットPCの普及がなかなか進んでいないが。
「確かに国内で伸びていないのは事実だ。しかし、米国では前年比60-70%増で推移している。病院や保険会社、自動車ディーラーなどに普及が進んでいる。マイクロソフトが今年後半に発売する予定の次期OS『ウィンドウズビスタ』はペン機能が搭載されると聞いている。タブレットPCが普及するかはともかく、今後は国内で法人と個人ともにデジタルペンを活用するケースが増えるのは間違いない」
――ワールドワイドのなかで需要が眠っている地域は。
「韓国、中国、シンガポールなどアジア地域だ。この地域では米国や欧州、日本などの映画が広まりつつある。そのため、プロフェッショナル分野でペンタブレットを活用するようになるとみている。また、映画供給が多いインドでも、ペンタブレットの普及を期待している」
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■店頭販売は2ケタの伸び
ペンタブレットの店頭販売は、台数と金額ともに2ケタ成長を達成している。BCNランキングによれば、05年12月は台数ベースで前年同月比27%増、金額ベースで15%増という結果だ。
店頭販売が好調なのは、トップメーカーのワコムが冬商戦に向けてラインアップのほぼすべてをバージョンアップしたことが大きい。加えて、ワコムでは顧客の裾野を広げるため、「各量販店の旗艦店にタブレットの全体像が理解できるコーナーの設置を提案している」(山田社長)という。実際、最近ではタブレットコーナーを充実する家電量販店やパソコン専門店が増えているのも事実だ。
ワコムは、ショップでのコーナー作りでデジカメメーカーとのタイアップも検討しているという。店頭プロモーション活動を強化し、パソコンユーザーのペンタブレットに対する抵抗感を払拭させる方針。
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