臨界点
キヤノン販売 常務取締役コンスーママーケティングカンパニープレジデント 芦澤光二
2006/01/16 18:45
週刊BCN 2006年01月16日vol.1121掲載
好調なインクジェットプリンタ、健全性ベースにシェア伸ばす
――05年のインクジェットプリンタの販売動向は。「年末商戦を含め、05年は国内外ともに良い形で進んだ。売り上げについては、国内で前年と比べ数%増、グローバルでは2ケタ成長を遂げた。インクジェットプリンタ事業は、06年もコンスーママーケティングカンパニーのビジネスを拡大していくうえで大きな大黒柱になる」
――好調の要因は。
「健全性を前提としたビジネスを徹底したからだ。シェアと利益、在庫調整を三位一体で行った。継続的なシェア拡大を視野に入れ、営業面では、各担当者が家電量販店やパソコン専門店などに対して当社の製品を理解してもらうため〝辻説法〟の営業を徹底した。新製品の発売時期には、旧製品と重なる期間を4週間から1週間に短縮した。こうしたことで利益を増やせる体制が敷けた」
――製品ニーズや価格などの面で、プリンタ市場の変化は。
「05年の年末は、商戦のピークに近づくにつれて、上位機種が売れるようになった。これは、画質の良いプリンタが欲しいというニーズが高まっているからだ。そのため、単価の高いものが売れる状況になっている。また、ダイレクトプリンタを購入するユーザーが増大している。昇華型のコンパクトフォトプリンタ『セルフィー』シリーズは、05年の販売台数が前年の2倍に達する見通しだ。消耗品に関しては、カートリッジが前年比20-30%増と堅調に推移している。デジタルカメラで撮影した画像を自宅のプリンタで印刷するという〝デジタルフォト〟の文化がユーザーに浸透していることの表れといえる」
――複合機に関しては。
「競合他社に比べれば出遅れたのは否めない。しかし、05年冬商戦向け製品のフラッグシップモデルである『ピクサスMP500』が機種別販売台数シェアでトップを維持している。ユーザーは単機能機よりも複合機を求めているのは確かだ。個人向けプリンタ市場のなかで複合機が占める割合は60%に達した。今後は、デザイン面や機能面で〝キヤノンが開発すれば複合機はこうなる〟という主張を追求していきたい」
――06年は、複合機でもトップシェアを奪取できるか。
「営業面では、むろんシェアの拡大を掲げていく。しかし、あくまでも利益とのバランスを重視して、健全性を確保したビジネスで数字を伸ばしていく」
――単機能プリンタ市場は縮小傾向に陥っているが。
「確かに、複合化の流れが強く、単能機の市場が拡大するとは言いがたい。プリンタ市場で占める割合も30%まで下がっている。しかし、A3版モデルなどで差別化を図れば、単機能プリンタのビジネスでも利益を確保できる。単機能機と複合機、昇華型プリンタの全方位で攻めるという策が健全で、他社よりも有利な戦いが行えると確信している。しかも、デジタルフォト市場を一段と拡大することにつながる」
――06年の販売台数見込みは。
「単機能機は横ばいを見込んでいる。複合機は台数と金額ともに前年度比20%増を目指す。昇華型プリンタに関しては、プリンタ市場の10%を占めるようになっており、ますます需要が増えるとみており、3倍以上の伸びを期待している」
DATA FILE
■キヤノン、個人向け市場で首位を獲得
単機能機と複合機を合わせた個人向けプリンタ市場でキヤノンがトップシェアとなっている。
BCNランキングによれば、05年12月12-18日までは、メーカー別販売台数シェアでセイコーエプソンがトップシェアを維持していたが、年末商戦の販売が佳境に入った12月19-25日でキヤノンが46.9%のシェアでトップを獲得。12月26-06年1月1日も、キヤノンが首位をキープした。
キヤノンが首位になったのは、単機能プリンタの好調に加え、複合機の機種別台数シェアで「ピクサスMP500」が11月からトップになるなど、複合機も順調であることが大きい。複合機の店頭販売は、現段階でエプソンがトップだが、複合機が06年におけるインクジェットプリンタ市場のメイン機種といわれているだけに、メーカー間のシェア争いは一段と加熱するとみられる。
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