臨界点
ニコンカメラ販売 西岡隆男社長
2006/01/02 18:45
週刊BCN 2006年01月02日vol.1119掲載
「D200」は戦略商品、プロの要求と使いやすさを20万円以下で実現した
――昨年の締めくくりに登場した「D200」は、上位機種に次ぐ性能を持ちながら、価格は20万円以下。かなり思い切った設定だが。「予約価格で19万8000円。販売店や代理店からは、予想外の安さ、と驚かれている。CRM(顧客情報管理)の一環として行っている、ニコンユーザー調査によればミドルレンジのデジタル一眼レフに求められる価格は「15万円から20万円」という回答が多い。D200はこの価格帯に入れることができた。競合するメーカーを意識しなかったと言えばウソになるが、ニコンのデジタル1眼レフカメラのラインアップの中核を占める機種としては十分に戦略的な価格と考えている」
――製品の開発スピードもフィルムカメラ時代とは大きく違う。
「2005年だけでファミリーをターゲットにした「D50」から「D70」の後継機種となる「D70S」、プロ用の「D2X」、「D2Hs」、そして今回の「D200」と5機種もデジタル一眼レフを発売した。それぞれ開発を並行して進めているが、フィルムカメラが中心の時代では考えられない開発スピードだ。そして画質をはじめとして性能向上に必要な技術革新のスピードも速い。それに対応して、続々と製品を開発し市場投入していかなければならない」
――その一方で、競合はカメラメーカーだけでなく、高機能のレンズ搭載を武器にした家電メーカー製のデジカメ上位機種ともぶつかる。
「ニコンはこれまで3500万本ものニッコールレンズを販売してきた。これはカメラメーカーとしては大きな資産だ。この資産があることでデジタル一眼レフへの移行も進んでいる。加えて、デジタルカメラ用のDXレンズを開発し、ボディと合わせたレンズキットとして発売していることも販売に寄与している。これまでニコンのフィルム一眼レフユーザーが、同じくニコンのデジタル一眼レフを購入するケースが一般的だった。ところが一昨年D70を発売した際には、他社一眼レフユーザーがニコンに乗り換えるケースが意外に多かった。カメラボディの単体販売に比べて、レンズキットが当初の予想より多かったことも、他社からの乗り換えが多かった証拠と言えるだろう」
――デジタル一眼レフになると、需要予測も難しいと。
「実はニコンユーザーの動向は予想できても、他社からの乗り換えユーザーまではなかなか把握できない。それでD70を発売した時に品薄状態がしばらく続いた。D200ではそうした状況にならないように注意したが、予約段階ですでに増産が必要な事態になってしまった」
――プロ用上級機に近い機能をこれだけの低コストで詰め込めた理由は。
「ハードとソフトの技術革新が目ざましい。これにより低コストでも高機能を実現できるようになった。そこでD200はミドルレンジ機種としてハイアマチュアだけでなくプロカメラマン向けの機能も多く盛り込んだ。幅広いユーザー層をターゲットにしようとすれば、初心者が求める使いやすさとプロが要求する耐久性、画質性能などを同時に実現することが必要だった。それほどデジタル1眼レフカメラの開発競争は厳しくなっているということだ」
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■D200効果でニコンがキヤノンに並ぶ
デジタル一眼レフカメラ市場は、2005年12月16日発売のニコン「D200」の登場で一気にシェア争いが激しくなった。BCNランキングによれば、12月18日までのメーカー別販売台数シェアでニコンが38.2%に急拡大。これまで首位を独走していたキヤノンの38.2%をとらえた。
ニコンカメラ販売は、発売1か月前から全国6か所で新製品展示イベントを開催。東京会場では、3日間で9000人以上が詰めかけたという。12月16日の発売日以降は前評判通り順調に販売台数を伸ばしている。
ボディ価格15万円以上をミドルクラスとしてみると、12月12日から18日の週次データによるシェアはニコン87.2%、キヤノン12.3%で「D200」の滑り出しは好調だ。ハイスペックな製品だが、上位機種である「D2X」の販売に影響は出ていない模様だ。
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