臨界点
NECパーソナルプロダクツ 代表取締役 執行役員専務 兼 PC 事業本部長 髙須英世
2005/11/21 18:45
週刊BCN 2005年11月21日vol.1114掲載
年末商戦は前年比10%増、市場は新しい成長のステージに入った
――コンシューマ市場が本格的な復調期に入ったという見方がありますね。「確かに好調だ。当社の場合、今年度上期(3─9月)は、デスクトップ、ノートを合わせて台数が前年比108%と伸びた。コンシューマモデルに限ると、今年第1四半期(1─3月)にプラス成長に転じて、第3四半期(7─9月)は110%と2ケタ増になった。いい展開だ。昨年は、オリンピックで需要が低迷した分、今年の伸び率が高めに出る傾向はあるが、確実に伸びている。年末商戦についても、このまま前年比2ケタ増でいけるはずだ」
――需要増の要因は。
「パソコンのAV機能が格段に向上して、販売に弾みがついてきた。秋冬モデルでは、独自開発の高画質エンジンでテレビと同レベルの鮮明な画像を楽しめる。ブロードバンドでネットの映像も簡単に見られるようになった。こうしたAV機能の強化が、新しい需要につながっていると思う」
――今後もこの成長は続くと。
「最近のデスクトップ・パソコンは9割がテレビ機能を搭載し、テレビを見ることが当たり前になった。これはパソコンの活用方法が、新しいステージに入ったことを意味している。来年は、マイクロソフトの次世代OS『ウィンドウズ ビスタ』が登場して、さらに市場は活性化する。そうした意味で、パソコン市場は完全に新しい成長期に入ったといえるだろう。06年通期で見ても、コンシューマ市場は10%弱の成長は可能だと見ている」
――競合が激しいが、トップシェアを維持するための施策は。
「顧客の満足度向上を常に意識している。とくに、初心者や年配者にも使いやすい環境を提供するためには、サポートが重要だ。顧客は、価格だけで製品を選ぶわけではない。顧客満足度を高めるために、毎年CS調査を実施しているが、評価は着実に上がってきている。その証拠に、日経パソコンのパソコンメーカーサポートランキング総合第1位を2年連続で獲得した。こうしたサポート重視の取り組みが、競合との差別化をはかるうえで大きな役割を果たしている」
――生産体制の効率化は。
「トヨタのカンバン方式を軸とした生産管理が効果を上げている。とくに部材の調達を含めて、RFIDを使った電子カンバン方式を採用したことで、生産から配送までのリードタイムが最短2日に短縮できた。以前は商品の切り替え時期の流通在庫などもそれほど気にしていなかったが、いまは新製品を素早く立ち上げるために正確な生産、在庫管理が必要になっている。生産方式の革新は、こうした意味でも競争力の強化に直結している」
――来年とくに力を入れる施策は。
「市場は当面、パソコン、ブロードバンド、AVが軸になっていく。この意味でも当社が運営する映像配信サイト『BIGLOBEストリーム』とシームレスにアクセスできることを大きな優位点として訴求していく。さらに家庭にあふれている様々なデジタル機器をパソコンで簡単にネットワーク化し、外部からもファイルにアクセスできるホームサーバー的な機能を実現させていきたい。こうした施策によって、来年は確実に2ケタ成長を達成したい」
DATA FILE
■「BCN AWARD」中間集計で2部門トップ
BCNランキングが年間販売台数ナンバー1メーカーを表彰する「BCN AWARD」の中間集計(05年1-10月)によれば、デスクトップパソコン部門、ノートパソコン部門ともに、NECがシェア1位を堅持している。とくに夏商戦が好調で競合を引き離した。
年末商戦の立ち上がりを10月単月の販売データでみると、ノートパソコン全体の前年比伸び率が110%、デスクトップパソコンは108%と、いずれも好調。
とくにこの数年、ノートに押されて前年比マイナスが続いたデスクトップパソコンが2ケタに近い伸びで復調傾向を示している。闍須専務のコメントにあるとおり、大型の液晶画面でテレビやDVDビデオなどを楽しむAV指向の高まりが、パソコン全体の需要を押し上げていることがわかる。NECはとくにAVノートパソコンの伸びが高く、前年比113%と健闘している。
- 1