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米ニューヨークで「デジタル・ライフ」開催 生活に密着したITを紹介

2005/10/31 16:51

週刊BCN 2005年10月31日vol.1111掲載

 MP3や各種のゲーム機器、そしてハイビジョンテレビや携帯電話。進化し続けるITはわれわれの生活と密接に関わるようになっており、そして生活そのものもITによって大きく様変わりを遂げてきた。米ニューヨークのジャビッツ・コンベンションセンターで10月14-16日の3日間にわたって開催された展示会「デジタル・ライフ」は、ITが日常生活に密着するに従い、ITをいかに生活に取り入れるかが焦点になっていることを改めて知らしめたイベントだった。低迷が続くIT関連イベントの中で異彩を放つこの展示会の成功の秘訣は何だったのであろうか。(ニューヨーク発)(田中秀憲●取材/文)

展示会の新しい形を提示

■企業100社、来場者2万5000人
 
 今回の展示会「デジタル・ライフ」は、IT関連雑誌を数多く発行するジフ・デービスが主催した新しい形のITイベントだ。100社を超える出展社の盛況ぶりもさることながら、悪天候にもかかわらず3日間で2万5000人以上の集客を実現したこのイベントは、近年では最も成功したIT関連イベントといって良いだろう。

 デジタル・ライフという言葉からそのまま連想されるものは、やはりiPodを代表とするMP3プレーヤーだろう。市場の勢いそのままに、各メーカーが最新の機器を並べ、周辺機器メーカーのアクセサリー類の充実ぶりも目を見張るほどだ。対抗馬と見なされる衛星ラジオも、最大手のXMサテライトラジオが加入者の確保に躍起である。携帯するIT機器という点では、オーディブル・ドットコムのように機器やプラットフォームを問わない音楽配信サイトの出現で更なる普及が見込まれ、携帯電話へ動画をリアル配信するmobitv(モビティーヴィー)のような新進企業は今後の携帯IT機器のあり方を示唆していた。

■ゲームは高機能化と簡便さの2つに

 もう一方の雄であるコンピュータゲーム市場は、技術進化をそのまま家庭に持ち込んできた。任天堂やナムコなどはもちろん、Xboxのマイクロソフトやプレイステーションポータブル(PSP)のソニーといったハード組も広いスペースで派手な演出を行っていた。

 現在のコンピュータゲームは、よりリアルに、より高機能・高画質へと進化し、それとともに多くの熱狂的なゲーム愛好家を生み出した。このイベントでも人気ゲームのトーナメントなどが数多く行われ、全米をはじめ世界各国から出場者が集まり、その妙技を披露していた。

 もっとも、高機能化したゲームを楽しむのは一部の熱狂的なファンだけで、一般のユーザーからは「操作があまりに難しく家庭で楽しめない」と不満の声も聞かれるという。そこでゲームのルールを簡単に理解でき、誰もがすぐに楽しめるゲーム専用機器も多く展示されていた。ボーリングやゴルフ、釣り、テニスなど、誰もが楽しんでいるレジャーをそのままテレビ画面で楽しめる専用機を多く展示していたザビックスは、製品価格を低く抑える戦略で、簡素なゲームの方が間口が広いと今後に自信を見せる。そしてこのような多様な方向性が生まれてきたのも、ここ数年のITの飛躍的な進化と、その普及による低価格化が実現したものに他ならない。

 一般家庭へのアピールという点では、大手IT産業も同様である。これまでプロフェッショナル向け製品が中心だったアドビシステムズは、一般のデジタルカメラユーザー向けに開発された「アドビ・フォトショップ・エレメンツ」のデモに力を入れていた。デジタルカメラで撮った写真の整理や印刷などに特化したこの製品は、「フォトショップ」の“高機能でプロ向けの製品”という枠を打ち破ろうとする意欲作だ。

 東芝のプレゼンテーションは寸劇仕立てであったし、NECは大画面液晶テレビの美しさを前面に押し出していた。マイクロソフトはXboxとMP3プレーヤーが中心で、ウィンドウズOSやオフィスなどは、その名前さえ見ることができない。これはやはりお堅いビジネスイベントではないからだろう。

■49ドルのSTBも無料配布

 イベント期間中は、あいにくの悪天候に加え、入場料が8ドル(約950円)と決して安くないにもかかわらず、会場は老若男女を問わず幅広い年齢層の来場者であふれた。各ブースでは趣向を凝らしたノベルティを大量に配布し、来場者が手にする紙袋はTシャツやアクセサリーであふれ、会場では映画「スターウォーズ」のダースベーダーやゲームのキャラクターが闊歩する。番組情報提供会社のティーボなどは、通常49ドルのセットトップボックス(STB)を無料配布し、同社のブースには来場者が長蛇の列を作っていた。なにより来場者も出展側も皆が笑顔なのが印象的であった。

 メーカー主導による技術優先ではなく、ITがいかに一般の生活に寄与していくのかを分かりやすく紹介するこのイベントの成功は、今後IT業界にとって大きな励みとなるだろう。コムデックスのようにこれまでに消えていった、そしてニューヨークを離れ低迷から脱出できなかったマックワールドなど、従来の展示会とは一線を画していたのは間違いない。来場者が楽しむことで初めて出展社へのメリットも生まれるということを改めて感じさせるイベントだった。

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