石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>28.テレビ上でネットを使う?!

2005/10/24 16:51

週刊BCN 2005年10月24日vol.1110掲載

 「30センチと3メートル」──テレビとパソコンそれぞれの利用時の距離。「視聴と作業」、使用目的による違いである。しかし、ユーザーの利便性という視点から見れば、テレビとパソコンの融合はもはや不可避。仕事の現場では、パソコンで作業を行うのは当たり前である。クリエイティブな作業やアクティブな作業を行うには、これまで通りパソコンを使った方が便利だからだ。しかし、一般ユーザーが作業以外に、例えば自宅で「インターネット閲覧」に利用する程度ならば、複合的に拡充された製品が歓迎されるのは間違いないところだろう。実際、官民あげての試みとして、テレビを家庭内の情報端末の中核にしようという考え方もある。総務省では、自治体サービスなどをネット経由で配信し、テレビ画面で表示できるようにする、いわゆる“利活用”と呼ばれるスタイルを関連事業者の合意の下で進めているのだ。

 ただし、テレビ放送とネット情報機能が本格的に“同居”することになるとしたら、いくつかの問題点が考えられる。まず、安全性の問題である。テレビとネットが融合することになれば、新たに色々なサービスも期待できるが、その一方でネット上の各種の攻撃など、さまざまなセキュリティ上の危うさが生じる。テレビの表示機能にまで影響を与えるようなウイルスがばらまかれる可能性も否めないのだ。家電メーカーや通信事業者は、こうしたリスクをあらかじめ起こり得るリスクとして対処し、テレビ上でネットサービスを受けられる環境を構築する際、システム側で悪質なウイルスをブロックする体制をきちんと整えておくといったことが必要なのは明白だ。

 もう1つは混在表示の問題。携帯電話のワンセグ放送の規格を決める際にも問題になったテレビ映像とネットの混在表示をどうするかといったこと。具体的には、情報の確実性や広告掲載などにも慎重にならねばならない。

 こうした問題以外にも克服すべき課題を数えればきりがないが、ハードとしてのテレビ受信機においても、放送局やキャリアなどで、テレビとネットの融合は進んでいくことになる。状況が一変する速さも尋常ではない。

 実際にテレビ画面上でのネット利用が進めば、パソコンとはまったく違う形でのコンテンツのあり方も提案されてくることになるだろう。いつまでも既存の常識の中に捉われていては、開かれていく(であろう)家電の未来が見えてこなくなってしまうかもしれない。
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