店頭流通
白熱する携帯オーディオ市場 「iPod nano」が引き金に
2005/09/26 18:45
週刊BCN 2005年09月26日vol.1106掲載
「ウォークマン」と真向勝負
■アップル対ソニーの構図鮮明にBCNランキングによると、9月8日の「iPod nano」発売前は、フラッシュメモリタイプの携帯オーディオ市場ではソニーがアップルを巻き返していた。この勢いをかって新「ウォークマン」では、フラッシュメモリとHDD(ハードディスクドライブ)の両タイプを揃え、HDDタイプでも追い上げを図り、確実にウォークマンブランドを蘇らせる戦略に打って出た。
しかし、その発表当日にアップルは2GBと4GBのフラッシュメモリタイプ「iPod nano」を発売。ソニーの挑戦を真っ向から受けて立つ姿勢を鮮明にした。
原点回帰を掲げる新「ウォークマン」は、ライフスタイルの提案、トレンドの創造を目指したかつての開発姿勢に立ち戻り、音楽、映像、その他のメディアへの対応、メディアコンバージェンスの実現をコンセプトに据えた。製品作りとしては、「垂直統合型の閉じた考え方でなく、自社技術に加え、オープンな技術にも柔軟に対応していく」(辻野晃一郎・ソニーコネクトカンパニープレジデント)方針で、ユーザーに対するホスピタリティ追求のためには、オープン技術も積極的に取り入れていく考えを示した。
■リオ・ジャパンは9月末で撤退
今後も高い成長が見込まれる携帯オーディオ市場だが、そうしたなかリオ・ジャパンは8月下旬、同市場から9月末で撤退すると発表。リオ・ジャパンは、BCNランキングでアップル、ソニーに続く3位のメーカーだったため、市場関係者らに大きなインパクトを与えた。
嶋田幸一・ヨドバシカメラ新宿西口店オーディオ・ビジュアルチームサブマネージャは、「リオ・ジャパンの撤退は、顧客にマイナスイメージを与えるとともに、携帯オーディオ市場全体にもマイナスイメージをもたらす可能性がある」と危惧する。また、あるショップでも、リオ製品は充実した機能で人気があったことから、9月に入ってから急きょ撤退の話を聞いて驚いているという。
「ただ、店としては商品が多すぎると顧客が選びにくいこともある。メーカーが絞られるのは良い点でもある」(嶋田サブマネージャ)との意見もある。
■各社、価格や機能で勝負へ
一方、香港の携帯オーディオメーカー、AVCテクノロジーの日本法人であるAVCテクノロジージャパンは今年7月から「SIGNEO」ブランドで製品を投入、日本市場に参入した。同社では当初、来年3月までの売上目標を30億円としていたが、「40億円はいくだろう」(矢野間也寸志・取締役COO)と強気の姿勢を見せる。年末商戦に向けて今秋から10機種を投入していく方針を明らかにしており、「iPodの低価格に対抗する」(同)と意欲的だ。「多機能で、価格はソニーとアップルの真ん中をいく」(同)戦略で挑む。
クリエイティブメディアは、「デザイン、カラーなど、豊富なバリエーションで女性ユーザーを拡大」(高橋慎治・チャネル事業部事業部長)してきており、スピーカー、ヘッドフォンなど周辺機器の販売と合わせて「トータルで提案できる」ことが強みという。さらに、「CD、MDプレイヤーからのダイレクト録音対応機種など、それぞれのニーズに合わせた豊富なバリエーション」で、ユーザーが多くの選択肢の中から選べるようにしている。
AVCテクノロジージャパンもヘッドフォンやスピーカーなどの関連製品の投入を検討しており、携帯オーディオを販売するだけでなく、“聴き方の提案”をトータルにできることも重要なポイントに置いている。
ヨドバシカメラによると、携帯オーディオの販売は「前年比2倍の売れ行きで、若年層から中高齢層まで幅広く売れている」という。「どちらかといえばメモリタイプの方が小型、軽量のため売れており、HDDタイプは音楽を聴く以外の用途で購入しているケースが多い」と分析している。
「すでに買い替え需要が出てきている」(高橋・クリエイティブメディアチャネル事業部事業部長)など、今後、年末商戦に向け「3-4倍に伸びるだろう」(嶋田・ヨドバシカメラ新宿西口店サブマネージャ)と予測されるなかで、各社のシェア争いが一段と白熱してくることは間違いなさそうだ。
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