全国ショップ激戦図
<全国ショップ激戦図>90.東京・渋谷(下)
2005/08/29 18:45
週刊BCN 2005年08月29日vol.1102掲載
量販店との相乗効果を
メーカーが直営店をオープンすることで問題になるのは、直営店が売り上げを伸ばすことで近隣の家電量販店と競合する可能性が出てくる点だ。渋谷地区には、カメラ量販店のビックカメラが2店舗を構えている。なかでも渋谷東口店には、アップルのデスクトップパソコン「iMac」を中心に、アップル製品を展示したコーナーを設けている。以前、米アップルが名古屋の栄地区に「アップルストア名古屋栄」をオープンさせた際、大須電気街にあるアップル製品を扱うパソコン専門店関係者が、「アップル製品および関連機器の品揃えという点では、直営店には勝てない。しかも、発売後すぐに売り切れとなる人気商品に関しては、うちの店にはないがアップルストアでは売っているというケースも出てくる。このような場合、アップル製品の顧客を直営店に奪われた格好になる」と漏らしていたことがあった。今回も、量販店の来店者を直営店が奪うケースがないわけではない。
量販店との競争について、米アップルのスティーブ・ケーノ・リージョナルディレクターは、「その考えは間違っている」と否定。「むしろ、アップルユーザーが一段と渋谷を訪れるようになる」と、相乗効果により地域全体の集客率がアップすると、直営店進出の利点を訴える。米アップルにとって直営店を構えることは、「新規ユーザーを開拓するためのカギ」(ケーノ・リージョナルディレクター)と位置付け、渋谷地区がパソコンを購入する街として認知度が一段と向上すると試算する。
確かに、渋谷地区は10-20代の若者の間でファッションなどの流行発信地として定着しており、〝パソコンユーザーが訪れる街〟というイメージがあるとは言い難い。こうした点では、アップルストアの出店でパソコンショップが増え、これまで他地区でパソコンなどを購入していた顧客層が渋谷を訪れる可能性はある。
実際、東京・銀座では「ソフマップ有楽町店」や「ビックカメラ有楽町店」が、銀座地区をパソコンや家電などが購入できる街として定着させ、「アップルストア銀座」がアップルユーザーを集める機能を果たしつつある。
「渋谷店は日本で4番目の直営店。これまでのノウハウを生かし、しかも渋谷ならではのエッセンスを加える」(ケーノ・リージョナルディレクター)という。直営店と量販店との相乗効果を発揮できるかどうか、メーカーの腕の見せどころと言えそうだ。(佐相彰彦)
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