店頭流通
著作権問題に悩む米国写真プリント業界 デジタルデータの扱いに苦慮
2005/08/01 16:51
週刊BCN 2005年08月01日vol.1099掲載
米国では、デジタルカメラの普及で、撮影後の処理に関して著作権絡みの問題が浮上している。
プリントを請け負う業者が、その写真が著作権侵害をしていないかどうかの判断が困難な場合、一般の消費者が自ら撮影した場合であっても、プリントを拒否するケースが相次いでいるためである。
現在の米国の法律では、有名人や著名人などの写真を、本人もしくは本人の了承を得た者の許可なく現像やプリントすることを禁じている。
これは現像を依頼する側だけではなく、それを行う現像所側にも当てはまる。雑誌やポスターの複写や有名人との記念写真などが他に流用されることを防いできた。また幼児ポルノなど、犯罪に関係するような写真に対しても同様の措置が取られてきており、著作権を持つことと同義とされてきたネガフィルムの所有者や、撮影された当人以外はその複製はこれまでは難しかった。
もちろん絵画やイラストなど、そもそもの意匠に著作権が発生するような場合にもこの法律は適用され、無断の2次利用を制限してきた。
ところが、今では個人でも800万画素レベルのデジタルカメラを使う時代。デジタルカメラの進化とその普及とともに、パソコン上での作業に関しても、各種の画像処理ソフトの高機能化やその簡単な操作性により、プリントすべきデータの内容を一見しただけでは、それが著作権上問題があるものかどうかの判断は非常に困難になってきている。
CDや各種のメモリカードに記録されたデータは、撮影されたものなのかウェブからダウンロードしたものなのか、果ては加工されたものなのか、もしくは加工した人が誰なのかなど、その著作権の所有者を確認することは事実上不可能だ。
そのため、市中の現像所ではトラブルに巻き込まれることを恐れ、データの出典が確認できない場合はプリントを拒否するケースも出てきている。
かつてプロのカメラマンに訴えを起こされ、敗訴した現像業者もあることから、危険な真似は避けたいというのが彼らの本音である。
写真現像窓口業務は、デジタルカメラが普及し始めた頃には一時期停滞傾向だった。その後、デジタルデータの持ち込みに対応できるようになったこともあり、現在では再び大手のドラッグストアやスーパーマーケット内の窓口がその主役となっている。
しかし多数の来客があることが逆に不法なデータのプリントを見つけにくくしていることもあり、窓口での対応にはどこも苦慮している。
また最近ではメモリカードを持ち込んで自分でプリントできる自動販売機形式のプリント機を設置してあるところもあり、事実上野放し状態だ。この問題は関係者すべてが認識していながらも、解決の糸口は一向に見えてこない。
最近はプロのカメラマンでも自身の作品のプリントを断られるケースも出てきており、今後の業界の成長に影を落としかねない問題として関係企業は頭を悩ませている。
複製や加工が容易になったデジタル技術の普及は、それが仇となり個人での楽しみの場を厳しく制限する結果にもなりかねない。
ハードウェアメーカーはもとより、デジタル時代にようやく追いついた感のあるプリント窓口業務を営む経営者にとっては、可能な限り早く解消したいところだ。
しかし問題が多方面に関係していることを考えると、解決までにはかなり時間がかかりそうである。(田中秀憲)
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