秋葉原物語

<秋葉原物語>[第3部 ムーブメント]36.喫煙者の“憩い”の場

2005/07/18 16:51

週刊BCN 2005年07月18日vol.1097掲載

 秋葉原電気街に喫煙スペースがある。中央通りと神田明神通りの交差点にある「スモーカーズスタイル秋葉原店」がそれだ。もともと東京三菱銀行の秋葉原支店があった場所を日本たばこ産業(JT)が喫煙スペースとして改装して2003年3月にオープンし、“愛煙家”に無料で開放している。このスモーカーズスタイルが秋葉原電気街を訪れる喫煙者に好評で、平日で1日4000人、休日ともなれば6000人が利用するなど大変な賑わいをみせている。

 スモーカーズスタイルでは、専用の排気システムと空気清浄器を設置しており、愛煙家で賑わっても良好な室内環境を実現しているのが人気の秘訣だ。プラズマ式の最新の脱臭機も用意。店内にコーヒーや清涼飲料水の自動販売機を設け、利用者が快適な空間で喫煙できるように工夫したほか、ライターや携帯灰皿といった、喫煙グッズも販売している。最近は女性専用のスペースも設けた。

 スモーカーズスタイルの中をのぞくと、パソコンや周辺機器、組立パソコン用パーツなどを購入するために訪れた人が買い物を終えて一服したり、パソコン専門店や家電量販店などの店員が昼休みにちょっと抜け出して休憩したりしている。秋葉原地区を担当するパソコンおよび関連機器メーカーの関係者とおぼしきスーツ姿の会社員が休憩していることも少なくない。

 そもそも、JTがこうした場所を設置したのは、千代田区の「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例(千代田区生活環境条例)」により、秋葉原電気街が「路上禁煙地区」に指定されたためだ。以前はショップの店頭や路上に灰皿があったが、この条例を機に、ほとんどの店舗が灰皿を撤去した。

 分煙が進み、愛煙家にとってタバコを吸えるスペースを探すのも一苦労。ショップにとっては、「たばこが吸えるスペースが少ない」という理由から、お客さんが秋葉原電気街を敬遠しはじめたら大変。煙草に害は多いが、それでも喫煙者はいる。スモーカーズスタイルの存在が、集客に少なからず貢献している可能性もある。

 秋葉原電気街が路上禁煙地区になったことで集客が極端に減ったという現象は起こっていないようだ。最近では、スモーカーズスタイルを“憩い”の場とし、見知らぬパソコンユーザー同士が情報交換の場として利用しているという。(佐相彰彦)
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