店頭流通

家電量販各社、ウェブ販売を強化

2005/07/11 16:51

週刊BCN 2005年07月11日vol.1096掲載

ネットショップを売上増の要に

リアル店舗を補完する役割も


 家電量販店の出店競争の裏側で、それぞれがインターネット販売も強化する動きが顕著になってきた。ネットショップで新しいコーナーを設置したり、売り上げアップのためにサイトの統合やリニューアルを図るなど、各社はウェブ販売でもしのぎを削っている。出店競争に明け暮れるだけではない、ネット販売でも激しいマーケットシェア争いが繰り広げられている。(佐相彰彦●取材/文)

■新しい商材の販売などリニューアル相次ぐ

 コジマは、ネットショップ「オンライン・コジマ・ドット・ネット」にDVDソフト専門のサイト「コジマソフト」を7月2日にオープンした。取り扱うタイトル数は10万タイトル以上で、国内最大級を誇る。タイトル数が多く、購入したい商品がなかなか見つからないユーザーが出てくることもあり得る。それを回避するため、このサイトではタイトル名やキャスト、監督名に加えてストーリーの中のセリフでも検索が可能な「コジマ何でもサーチ」機能を搭載した。価格面では、新タイトルの予約商品については20%以上のポイント還元で割安感をアピールしている。

 同社のリアルショップでDVDソフトを扱っているのは全国229店舗中45店舗。各店舗のDVDソフトの売上高を合わせると30億円。小島章利社長は、「オンラインショップの売上高も、リアル店舗の合計と同じ30億円を見込む」と強気の姿勢をみせる。「今後はオンラインで当社が取り扱う全タイトルを販売し、DVDソフトビジネスの柱に位置づける。DVDソフトの国内マーケットは4000億円規模といわれているが、オンラインショップを中核として、将来は10%のシェアを獲得する」と自信満々だ。

 エディオンは、子会社のデオデオとエイデン、ミドリ電化、暮らしのデザインのインターネット事業部を統合し、エディオングループのネットショップ「エディオンダイレクト」として5月5日からサービスを開始した。家電機器やパソコンおよび関連機器などに加え、カタログ販売で扱ってきた家具も販売するサイトだ。

 暮らしのデザインの武政良治・エディオンダイレクト事業部長は、「リアルショップでは、店内に商品を置かなければならない。しかしネットショップなら、デオデオとエイデン、ミドリ電化で扱う家電やパソコン、暮らしのデザインで販売する家具を融合することが可能になり、グループ全体のシナジーを発揮できる」ことがメリットと語る。エディオンダイレクトは、サービスを開始してから約2か月が経過した6月末の時点で、新規ユーザーとして約2万人を獲得。今年度の売上高は30億円と見込んでおり、「06年度には60億円を目指す」(武政事業部長)と、ネットショップでの売り上げ拡大に期待を寄せる。

 ほかにも、ヤマダ電機やビックカメラ、上新電機などの大手がネットビジネスの拡大に力を注いでいる。ネットショップでトップのヨドバシカメラも、ネットショップの売上高を伸ばすため、夏商戦に合わせてサイトをリニューアルするなど、他社の追随を封じるための策を講じている。

■ますます広がるユーザー層、リアルショップ来店にも効果

 家電量販店各社がネットビジネスを強化しているのは、ネットで商品を購入するユーザーの裾野が広がっているためだ。これまでは、ネットユーザーがリアル店舗の来店者になるという図式が成り立たなかったため、ネットショップをビジネスの柱にするという家電量販店が少なかった。しかも、ネットショップが繁盛すれば、その分リアル店舗の来店者が減るというマイナス効果を予測し、ネットショップに力を入れない量販店もあった。

 しかし実際には、リアル店舗でパソコンや家電などを購入する場合でも、自分が買いたい商品の価格や機能などを調べるためにショップのサイトを利用することが多い。ある家電量販店では、リアル店舗に来店したことはなかったのに、ネットショップの品揃えや価格などを調べて、ネットで購入したことがきっかけとなって、リアル店舗のリピーターになったケースもあるという。

 ネットショップの顧客でも、必要があればリアル店舗に訪れる。こうした消費者の動向も、ネットショップの強化に拍車をかけているといえそうだ。

 さらに携帯電話で商品が購入できる「モバイルサイト」を立ち上げる量販店も増えた。ショッピングサイトを単なる販売チャネルの1つと位置付けるのではなく、新規顧客を獲得する情報発信のツールとしても活用しているわけだ。

 「ネットショップ会員の大半は、近くにエディオングループの店舗があれば来店している」(暮らしのデザインの武政事業部長)と、ネットで新しく獲得したユーザーも、リアル店舗に来店することは決して少なくないと考えている。そして、「近くにエディオングループのショップがないユーザーに対して、エディオンのブランドを高める効果がある」(同)と、リアル店舗がなくても、エディオングループの知名度を広げることも可能という。

 コジマの小島社長も、「ネットショップは、リアル店舗のユーザーを奪うものではない。むしろ、ネットショップを強化することはコジマブランドを一段と高め、リアル店舗への来店を促すための要になる」と断言する。

 多くのメリットが浮上してきたことで、リアル店舗での家電量販店同士の戦いがネットビジネスでも激しさを増すことになりそうだ。しかも、商品によってはネットショップでリアル店舗よりも安いプライスをつけている場合もあり、ネットショップ間での価格競争が激しくなる様相も呈している。

国内EC市場、BtoCは5兆6000億円規模  
 
 経済産業省と次世代電子商取引推進協議会(ECOM)、NTTデータ経営研究所が共同で実施した2004年度の「電子商取引に関する実態・市場規模調査」によれば、国内EC(電子商取引)市場はBtoBで102兆6990億円(前年度比33%増)と大幅に増加、BtoCでも5兆6430億円(同28%増)と大幅に伸びている。
 BtoBのEC市場が拡大した要因の1つは単価の高い「自動車」で、34兆3020億円(同22%増)。一方、自動車に次ぐ規模の「電子・情報関連機器」は、24兆6590億円(同2%増)で微増だった。
 BtoCのEC市場では、「医療・化粧品・健康食品」が2220億円(同44%増)と拡大に寄与した。「家電」は液晶テレビなどデジタル家電の急速な需要増が後押しして1190億円(同42%増)となった。「パソコンおよび関連機器」も、2620億円(同11%増)と堅調に伸びている。
 また、最近では携帯電話からの購入が増えており、モバイルコマースの市場規模は9710億円(同12%増)で、BtoCのEC市場の17%程度を占めている。
 
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