石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>14.迫力ある音響再生(1)

2005/07/11 16:51

週刊BCN 2005年07月11日vol.1096掲載

 大画面フラットパネルが話題になっているように、どうしても映像ばかりに目が行きがちだが、ホームシアターを下支えする「音」の影響力が実は大きい。例えば映画では、場面ごとに見る者の心理状態を動かすために「音」が活用されている。サブウーファーから発せられる振動が臨場感を高め、状況を描写する効果音が視聴者を包むなど、さまざまな手法で場面ごとの雰囲気をつくり出し、映像との合わせ技で視聴者を引き込んでいく。「音にこだわるユーザー」がサラウンド環境を整えたくなるのは、映像が伝えようとする情報を、音が演出する空気感や雰囲気によって強く補強してくれるからだ。

 映画など映像ソースで使われる音声フォーマットは、通常5.1チャンネルで構成される。フロントの左右2チャンネルがメインスピーカー。その中央にセンタースピーカーが配置され、左右斜め後ろに1個ずつ2チャンネル分がサラウンドスピーカーとなる。センタースピーカーの主な役割はセリフを再生させること。映像の中央からハッキリと聞き取りやすいセリフ再生を行うため、独立したスピーカーを用いる。特に数人で映画を見る場合、センタースピーカーがあれば、どの位置からでも映像の真ん中にセリフが定位する。サブウーファーの目的は単純に低音を再生するというよりは、「部屋の空気を動かすこと=雰囲気づくり」。映画視聴が目的なら、可能な限りサブウーファーを使いたい。

 例えば、DVDに収められているサラウンド音声フォーマットはドルビーデジタルがデファクト・スタンダード(事実上の業界標準)。ドルビーデジタルはAC-3という音声圧縮方式を用いて、5.1チャンネルが最大448kbpsで収められており、音楽CDなどでも使われるS/PDIF(光)端子で伝送可能。DVDでは必須の音声フォーマットなので、どんなDVDプレーヤーでも再生可能だ。ビットレートが低く抑えられているのは、ドルビーデジタルが元々フィルムに光学的に焼き込むことを目的に作られているため。

 これに対して規格上はオプションに設定されているDTS。家庭向けのDTSは、S/PDIFで保証されている最大ビットレートの1.5Mbps(実際にはもっと高いビットレートも伝送可能だが、保証値は1.5Mbps。S/PDIFが元々音楽CD用に開発されたもので、音楽CDのビットレートが1.5Mbpsなため)をフルに使った高品質の5.1チャンネル音声を収められる。各チャンネルに合わせたスピーカー設定で高品位デジタルサラウンドが満喫できる。
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