石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>6.進化するフラットディスプレイ(2)

2005/05/16 16:51

週刊BCN 2005年05月16日vol.1088掲載

 東京ビッグサイト(江東区)で開催された「Display2005(第1回国際フラットパネルディスプレイ展)」で注目技術を発見した。東芝が4月15日に発表した「インテグラルイメージング方式(光線再生方式)」を採用した裸眼立体視ディスプレイ技術だ。裸眼立体視技術としてはメジャーな「レンチキュラ方式」をベースに、視差数を増やして視野角の拡大と画質面の向上を図ったものだという。

 ディスプレイ表面にカマボコ型の微少なレンズ群を配置し、光の進行方向を制御。ソース画像を縦方向に裁断(インターリーブ)した状態で、レンズ下部にある画素に配置すると、レンズから多方向に光が出て、空間に立体映像を結像させる仕組みだ。光学的に“実像”を作る方式のため、目の負担を軽減し、長時間の視聴にも向いている。

 映像ソースには、12ないし16方向から撮影した平面画像もしくは相当するCG(コンピュータグラフィックス)データを使用(16視差)する。視差数が少ないと立体視できる範囲が狭かったり、見る位置によって3D映像が不自然に切り換わるといった問題が生じるが、正面から左右30度程度の範囲であれば、どこからでも自然な立体映像を見ることが可能だ。横から見ても像は歪まず、顔を動かすと表示した物体の側面が見えてくる。

 従来の裸眼立体ディスプレイは、右目と左目の視差を利用して立体感を感じさせる方式が主流だ。この方式では正しく立体視できる角度が限られ、目が疲れやすい。しかし、インテグラルイメージング方式の採用で目の負担も軽減でき、長時間の閲覧にも疲れないこともメリットの1つだという。

 展示されていたサンプルの画面解像度は480×300ドット。地上アナログ放送並みの品質で、展示映像やビデオゲームなどが立体表示されていた。教育展示やアーケードゲーム向けが実機開発のコンセプトという。ゲームでは、立体的に凹凸があるように見えるフィールドをキャラクターが動き、タッチパネルを組み合わせることで、指さした地点にキャラクターが移動する、といったことが実現できるようだ。

 応用分野としては、ゲーム以外にも、電子書籍閲覧や飲食店や販売店でのバーチャルメニュー、設計支援などが挙げられている。東芝では、今後さらに開発を進めていく方針。現時点で技術的な問題点はクリアされており、要望があればすぐにでもサンプルを提供できる態勢にあるとしている。また、2010年にはテレビへの導入も視野に入れているという。
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