店頭流通

NEBA解散の行方

2005/05/02 16:51

週刊BCN 2005年05月02日vol.1087掲載

 家電量販店の競争が激しさを増す一方だ。そのなかで業界の主力団体だった日本電気大型店協会(NEBA)が、今年8月で解散することを正式決定した。メーカーとの連携やショップ間の協業など、弱肉強食の生存競争はさらに激しさを増すことになるだろう。全国で駅前や郊外問わずに、大型店舗の出店が相次ぎ、マーケットシェア争いはさらに激化。量販店の生き残りをかけた戦いが今年、ピークに達するという見方も出てきた。(佐相彰彦●取材/文)

家電量販業界、“弱肉強食”の様相が顕著に

生き残りをかけた競争に


■NEBAが8月に解散「役割は終わった…」

 05年4月21日、NEBAは定時総会を開催し、8月に解散することを正式に決定した。1972年の発足から33年間続いた家電量販業界の主力団体は、その活動に終止符を打つことになった。

 解散する理由についてNEBAの岡嶋昇一会長(エイデン社長)は、「昨今の家電量販業界の厳しい情勢のなか、合従連衡など再編が次々と起こるなど新しい潮流が出てきている。そのような状況のなかでNEBAが継続していくことが果たして良いのかを模索した結果、NEBAの役割は終わったという結論に達した」と語る。

 しかし、「省エネ対策やリサイクルなど家電量販店が果たす役割は今後も継続していかなければならない。メーカーや行政などとの関係づくりや各量販店が直面する課題の解決などに取り組むためには、何らかの団体が存在することは必要。そういった動きに期待したい」(岡嶋会長)考えで、「現段階では、団体という枠ですぐに発足することが最適なのかどうかは、各量販店のニーズを考えると難しい。個別課題に対して家電量販店各社が協調関係を築くという新しい枠組みが出てくるのではないか」と、NEBAの解散によりNEBAの会員企業と非会員企業が連携する可能性にも言及する。

 「個人的には、連絡機構という簡単な枠組みから始まり、(団体結成といった)大きな発展に結びつくことが良いと考えている。自発的にリーダーシップを発揮する人や企業などが出てくることが望ましい」と、NEBAなき後の競争の激化を懸念してか、家電量販業界を網羅した団体の必要性を訴えている。

 NEBAは、最盛期に100社近くの家電量販店が参加していた。しかし、ITバブルが崩壊した2000年以降、パソコンの販売の凋落と歩調を合わせるように会員企業数も減少傾向をたどり、4月初めの時点では30社にまで減った。しかも、NEBAにはヤマダ電機をはじめ、ヨドバシカメラやコジマ、ビックカメラなど量販業界の上位4社が参加していない。家電量販業界の代表団体として、メーカーや行政などに意見をぶつけることや他団体との業界を枠を超えた連携などを行う力は、もはや失せていた。

 一方で、「NEBAが家電量販店間の連携を邪魔していた感もあった」(加藤修一副会長=ギガスケーズデンキ社長)と、業界団体という存在自体が足かせになっていた面も否定できない。さらに、「NEBAの解散で上位4社との連携が出てくるなど、会員企業や非会員企業との隔たりがなくなるのではないか」(同)と岡嶋会長と見方は一緒だ。

 共存共栄を図る側面が色濃かったNEBAの消滅は、業界が生き残りをかけた“仁義なき戦い”に突入するスタート合図になるだろう。

■大手量販店の出店が加速、マーケットシェア争い激化

 一方、大手家電量販店による大型店舗の出店は勢いを増しており、全国各地域でマーケットシェアを獲得するための競争が激化している。最近では、大都市圏への出店が多かった量販店が地方の中規模都市に店をオープンすることや、郊外型の量販店が駅前近くに出店するなど大型店の直接対決が各地で頻発している。

 ビックカメラは、JR柏駅東口駅前の「柏そごう」と隣接する商業ビル「スカイプラザ柏」内に「柏店」をこのほどオープン。近くにヤマダ電機やコジマの店舗があるものの、千葉県初進出ということもあり、30歳の若手ホープを店長に起用するなど、これまでとは一線を画した店舗作りに力を入れている。

 ヨドバシカメラは、JR宇都宮駅前の大型複合商業施設「ララスクエア宇都宮」内に「マルチメデイア宇都宮」を出店し北関東地区に進出。宇都宮地区はコジマの本拠地であるのと同時に、ギガスケーズデンキやベスト電器なども出店しているため、一気に競争が爆発しそうだ。

 また、同社は東京・JR秋葉原駅前の都市再開発地区に、家電量販店で国内最大級の売り場面積2万7000平方メートル級の巨艦店を9月にオープンする。サラリーマンや家族などの顧客ターゲットのほかにも、秋葉原電気街に訪れるパソコンユーザーの足を同店に運ばせるなど幅広く顧客を獲得する方針だ。秋葉原電気街内の老舗量販店に大きな影響を及ぼすことは確実。小規模店は閉鎖する危険性が高い。

 ヤマダ電機は、来年春に大阪・難波地区に大型店舗をオープンする。地下鉄なんば駅近くの出店で、都市型店舗でJR大阪駅前に出店しているヨドバシカメラの「マルチメディア梅田」に対抗する。ヤマダ電機が大阪中心部に進出してくることにより、難波地区から徒歩10分以内にある日本橋電気街は、さらに集客の減少というダメージを受けることになる。

 家電量販業界では、大手各社が過剰に店を構える“オーバーストア化”にとどまらず、駅前や郊外という枠を超えた出店が相次いでいる。各ショップが生き残りをかけた最善策を講じなければ淘汰されることは間違いない。

日本電気大型店協会  
 
 全国の家電量販店79社が集まり日本電気大型店協会(NEBA)を設立、1972年2月7日に東京・高輪プリンスホテルで設立総会を開催して正式に発足した。初代会長には、ラオックス創業者の谷口正治氏が就任した。定期的に開催する総会をはじめ、会員企業を対象としたセミナー、折にふれて米国流通市場視察、経営問題研究会などを行ってきた。  95年に組織改正や役員の大幅な若返りを含め、平井進吾・元マツヤデンキ社長が会長に就任した。需要創造に寄与するキャンペーンの実施など新しい事業にも取り組んだ。
 こうした2人の会長の意思を受け継ぎ、01年には岡嶋昇一・エイデン社長が3代目会長に就任。しかし、会員数の減少が原因となり、33年の活動に幕を閉じることになった。
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