石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>5.進化するフラットディスプレイ

2005/05/02 16:51

週刊BCN 2005年05月02日vol.1087掲載

 フラットパネルディスプレイのパネルメーカーが一堂に会する展示会「Display2005(第1回国際フラットパネルディスプレイ展)」が東京ビッグサイトで4月20日から22日の日程で開催された。話題の最新ディスプレイを一望できる絶好の場になっている。その展示会で最も注目したディスプレイが、キヤノンと東芝が開発した「SED(Surface-conduction Electron-emitter Display=表面電界ディスプレイ)」。

 SEDは次世代ディスプレイとして注目されているFED(Field Emission Display=電界放出ディスプレイ)の派生モデルで、ブラウン管並みの応答性と色再現性を厚さ10ミリ程度の薄型テレビで可能になるなど、ブラウン管とフラットパネルディスプレイの“良いトコ取り”を目指したモデルだ。

 ブラウン管を採用したディスプレイは、高輝度、鮮明な色、広い視野角などのメリットで依然広く普及しているが、「大型化を図れば重量が増える」構造から40インチ以上の大画面化が難しかった。

 そこで、ブラウン管の電子銃に相当する電子放出部をディスプレイの画素分だけ並べたガラス基板と、蛍光体を塗布したガラス基板を近接して配置し、その間を真空封止するという構造によって薄型化を図った。電子放出素子をディスプレイのすべての画素に放出することでブラウン管と同じ発光原理を生み出し、高画質な映像を作り出している。

 36インチのSED試作機での比較では、輝度の高い通常のテレビ番組だと同サイズのプラズマに比べて約3分の1、液晶に比べて約3分の2の消費電力となる。自発光ディスプレイのSEDは、暗い場面の多い映画ではさらに消費電力が下がり、同サイズの液晶に比べて2分の1の消費電力となる。

 液晶・プラズマに比べて画質も優れている。ブラウン管と同系列の蛍光体発光原理なので、高いコントラストを実現し、色再現、動画のキレ、視野角などでも液晶・プラズマに比べて優位。また、省電力のディスプレイとして環境問題が取りざたされるなか、十分に注目できる製品だ。

 動画情報を含む映像ネットワークや放送のデジタル化も進んでいる。このような時代には、高精細な映像コンテンツの普及は必至だ。忠実な再現力を持つSEDが、液晶・プラズマを中心としたフラットディスプレイに一石を投じる製品として期待が集まる。メリット先行の感もあるが、SED普及のカギは量産化と低価格化となるだろう。
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