拡大するデジタル情報機器市場
<拡大するデジタル情報機器市場>25(最終回).今後の展望
2005/02/28 16:51
週刊BCN 2005年02月28日vol.1078掲載
年初より、大手電機メーカーの業績下方修正の発表が続いた。デジタル景気の主役であったDVDレコーダーと薄型テレビは、数量を伸ばしたものの店頭価格が大きく下落して収益性が急速に悪化し、早くも消耗戦に入ったのではないかと報じられた。一方、主要部品の内製比率の高い一部メーカーでは逆に利益の上方修正を行う動きもみられる。ただし、機器販売型ビジネスにおいて、コア部品による差異化を競う構図は過去も繰り返されたものであり、この範囲では基本的なゲームのルールは変わっているわけではないと言えよう。
機器メーカーが羨望、または怨嗟の眼差しで睨むのは、依然として高い利益水準を維持し続ける通信事業者、とりわけ携帯電話事業者である。販売インセンティブによって端末を安価に普及させ月額利用料で回収するモデルは、継続的なサービスを提供するビジネスに適している。機器メーカー各社も、ネットワーク接続されるデジタル情報機器の分野では特に、機器販売モデルからサービス提供モデルへの転換を夢見て、数々の試みを行っている。
1人月額約7000円の携帯電話に匹敵するような市場が新規に成立することは家計の支出余地の観点から考え難いが、サービス提供型のビジネスで月額数千円の市場成立の余地があるのは、放送を含む映像コンテンツ市場と、ホームセキュリティやお年寄り・子供の見守りなどの安心・安全市場であろう。
なかでも当面の期待は映像コンテンツ市場であり、DVDレコーダーのネットワーク対応を軸とした展開が想定される。すでに家庭内のコンテンツ共有は実現されつつあるが、今後は光ファイバーを経由して家庭のDVDレコーダー向けにコンテンツを配信するサービスが展開されていく。その際には、サービス事業者の販売チャネル戦略や家庭向けサポート体制の観点から、販売店などにも多様なビジネスチャンスが生まれるであろう。
ただし、消費者が最も望むコンテンツは地上波放送番組であるため、市場成立のカギは、放送業界がビジネスモデル変化を伴ってネット対応するかに依存する。ここには制度動向も関わるため今後の確実な展望は描き難く、いくつかのシナリオに分けた戦略を考える必要がある。
最近ニュースを賑わしている放送局の議決権を巡る騒動の結末は、デジタル情報機器ビジネスの展望を占う上でも意外に重要な意味を持つのである。
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