店頭流通
プラズマか液晶か 大画面テレビ方式論争、CESで白熱
2005/02/07 17:00
週刊BCN 2005年02月07日vol.1075掲載
■家庭内の明るさが日米市場分ける
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ディスプレイ方式を見る視点は2つ。1つが直視型内での戦い、プラズマか液晶か──だ。
日本と米国の市場構造はまったく異なる。日本では、先行したプラズマに対し液晶テレビの伸びが著しいが、米はプラズマが圧倒的に強い。松下電器産業によると、米では32インチ以上の薄型テレビ市場の95%がプラズマで、残り5%が液晶テレビだ。03年は液晶テレビは3%程度であり、わずかに液晶も伸びたが、やはり直視型大画面はプラズマという常識は崩れない。「プラズマはリアプロジェクターより高いけれどカッコいい」というイメージだ。
ではなぜ日本では液晶テレビが伸びているのか。それは、使用環境、売り場環境に理由があるではないか。画質で最も大事なコントラストを測ると、プラズマは暗い場所に強く、明るい場所に弱い(コントラストが低下し、映像の力が弱くなる)。一方、液晶テレビはまったく逆で、暗い場所に弱く、明るい場所に強い。日本の家屋も店頭でも、蛍光灯でこうこうと明るい。従って、はっきり、くっきり映像の液晶テレビが好まれる。
米では、リビングルームは間接照明で暗く、店頭も暗い。液晶よりプラズマなのである。非常に単純な理由が日米の市場構造を分けている。米での売れ筋は、2000ドル以下で買える42型。ワイドVGAの解像度でHD-TV非対応だが、価格の安さで売れている。
■画質改善がテーマ
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液晶テレビは画質改善が今回のCESでのテーマだった。特にプラズマに比べて見劣りする色再現性を向上させる努力が会場で目に付いた。1つがLEDバックライト。ソニーはすでに「クオリア005」という液晶テレビで搭載しているが、CES会場では、サムスン電子が試作機を展示。鮮やかな原色を表示していた。
原色を増やすことで画質改善を図る技術を、筆者はイスラエルのベンチャー企業、「ジェノア・カラーテクノロジーズ」のブースで発見した。RGBの3原色にイエロー、シアン、マゼンダの補色を加えるもので、液晶テレビの場合は色フィルター数の増加、液晶やLCoSのリアプロジェクターの場合は、光学系でのデバイスとダイクロイックフィルターの追加で、色数を増やす。
カメラで撮影されたオリジナルのRGBの3原色信号から、信号処理で補色をつくり出すアルゴリズムがこの技術の根幹だ。実際に通常の3原色方式と多色原色の映像を見比べたが、非常に大きな違いがあった。
■DLPでは新表示技術が登場
もう1つの方式論争の舞台は、MD(マイクロディスプレイ=画素型)のリアプロジェクターだ。まず仕掛けたのが、高温ポリシリコン液晶陣営。その代表がセイコーエプソンだ。「米では、DLP(デジタル・ライト・プロセッシング)はデジタルでハイテク、液晶はアナログでローテク」というイメージがある。その評判を壊すために「3LCD」という業界団体を、ソニー、セイコーエプソン、松下電器産業、日立製作所、三洋電機、富士通ゼネラルの6社が結成、積極的な宣伝活動に乗り出した。
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1920×1080画素のリアプロジェクターが今後主流になるとみられているが、液晶ディスプレイはセイコーエプソンのD5デバイスにてそのままのネイティブ解像度でフルHD-TVに対応しているのに対し、DLPは「スムーズ・ピクチャー」という、特別な技術で対応。ダイヤモンド状の画素鏡を2倍速で振らし、隣り合った2つの画素を描画するという、なんとも巧妙な技術だ。縦方向は1080画素必要だが、横方向の画素数は960以上あれば、1920×1080の解像度を「表示」できる。これに対し、液晶ディスプレイ側は「ネイティブ解像度でない」とかみついたわけだ。このDLPの新表示技術は、サムスン電子、LG電子、東芝の製品で採用された。
ディスプレイ技術はまだまだ発展途上である。今後、さらに進歩することを確実に物語った今年のCESであった。
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